グーグルは、「Google Cloud Platform」の国内データセンターとして東京リージョンを開設し、正式に運営を開始したと発表した。これまで、アジアリージョンにおいては台湾のデータセンターが唯一の選択肢だったが、東京リージョンの開設により、日本の顧客にとっては、Google Cloud Platformをクラウド基盤として採用しやすくなる。この先、グローバルで有力クラウドベンダーの一社に数えられるグーグルのクラウドビジネスは、日本市場にどれほどの影響を与えるか。(前田幸慧)
グーグルは現在、米国3か所、欧州1か所、アジア1か所の計5か所にリージョンを設けるとともに、全世界で新規リージョンの開設を進めている。東京リージョンについては今年の3月時点で年内に新設することをアナウンスしていたが、ついに今月、予定通り開設へと至った。これによりGoogle Cloud Platformは、アジア圏内では台湾と東京の2リージョン、6ゾーンが利用できるようになる。

タリック・シャウカット
Google Cloud
プレジデント 東京リージョン開設の背景には、日本以外の場所にデータを置くことを不安視する顧客から、国内のデータセンター設置を求める声が多く寄せられていたことにある。これまでは、日本の顧客がGoogle Cloud Platformを利用する場合の多くは、アジアリージョンにおいて唯一の選択肢である台湾のデータセンターを利用していた。グーグルとしては、台湾でもレイテンシやパフォーマンスに問題はないとするものの、より多くのユーザーの要望に応えるために、国内リージョンの開設に踏み切ったかたちだ。タリック・シャウカット・Google Cloud プレジデントは、「世界のなかでも日本は5大市場のうちの一つ。日本のお客様やパートナーに成功してもらうためには、日本国内にGoogle Cloud Platformのリージョンを開設する必要があった」と説明する。また、「東京リージョンでは、台湾リージョンと比較して、レイテンシが平均50%~80%改善」していることから、ユーザーにとってはより使いやすくなっているという。
グーグルでは、今回の東京リージョン開設により、顧客層の拡大を見込む。ビジネス開始当初はインターネット企業が多かったものの、最近ではエンタープライズやSaaSプロバイダなどの顧客も増えつつあり、今後は顧客企業の業種、規模を問わず幅広くユーザーを獲得していきたい考えだ。グーグルの顧客はマルチクラウドでの利用のなかでGoogle Cloud Platformを選択するケースが多く、他社クラウドと競合する際には、強みとする「マシーンラーニング」の機能を差異化要素として訴求している。

塩入賢治
Google Cloud Platform
日本事業統括 顧客層の広がりとともに、新たなパートナーの獲得にも力を入れる。最近は、大手のSIパートナーやクラウド専業パートナーのGoogle Cloud Platformの取り扱いが増えてきているという。現在獲得している具体的なパートナー数は明らかにしなかったものの、塩入賢治・Google Cloud Platform 日本事業統括は、こうしたパートナーの存在が今後重要になるといい、「むこう1年間で現状の数倍にしていきたい」と考えを示した。
グーグルは、IaaS/PaaS市場で先行するAWSやAzureへの対決の意思表示を鮮明にはしていない。ただ、国内にリージョンを設けたことで、パートナーが担ぎやすくなるのは確かだ。2016年から17年にかけて、グローバルで10以上のリージョン増設に動いており、IaaS/PaaSビジネスを大きく伸長させる方向に動いていることはみて取れる。場所に依存しないのがクラウドのメリットだが、リージョンに関してはグーグルも例外ではないということだ。