エプソン販売(佐伯直幸社長)は、昨年12月に技術発表した乾式オフィス製紙機「PaperLab(ペーパーラボ)A-8000」の販売を開始した。水を使用しない乾式のオフィス製紙機としては「世界初」と銘打つ。セキュリティの向上や環境負荷の低減をメッセージとして打ち出し、ユーザーへ訴求していく。(前田幸慧)
PaperLab A-8000は、使用済みの紙を原料に、新たな紙を生成できる乾式オフィス製紙機。紙の生産において中核となるのは、エプソンが独自開発した「ドライファイバーテクノロジー」とよぶ技術だ。新たな紙が生成されるまでの工程は、まずドライファイバーテクノロジーを活用して、使用済みの紙(A3・A4普通紙)を水を使わずに繊維化。次に、繊維化した紙を結合素材「ペーパープラス」で結合し、強度や白色度の向上、色付けなどを行う。その後、結合した繊維を加圧して成形することによって、新たに紙をつくり出すという流れだ。

セイコーエプソン
市川和弘
部長 セイコーエプソンの市川和弘・ペーパーラボ事業推進プロジェクト部長は、「(PaperLabは)『セキュリティ向上』『用途に合わせた多様な紙の高速生産』『環境負荷の低減』という三つの価値を提供する」と強調する。セキュリティ向上では、使用済みの紙に記載された情報を、繊維化することで完全に抹消することができるため、機密情報漏えいの防止につながる。多様な紙の高速生産では、PaperLabに使用済みの紙を投入後、約3分で1枚目の紙を生み出す。A4用紙の場合、1時間あたり約720枚生産できるという。生産できる紙としてはA3・A4サイズの紙、名刺などに使用できる厚紙、色紙などさまざまだ。環境負荷低減では、一般的な製紙法で必要とする大量の水が不要なことや、設置した企業・自治体内で紙の生産が可能なことで紙の購入量を減らせること、紙の調達・廃棄にかかる輸送が減ることで二酸化炭素の削減につながることなどをあげている。

エプソン販売
鈴村文徳
取締役
エプソン販売
佐伯直幸
社長 エプソン販売では、PaperLab A-8000の提供にあたり、昨年12月の発表から導入を計画・検討している15の企業・自治体を「ペーパーラボプレミアムパートナー」と名付け、今月から順次販売していく。プレミアムパートナー以外の顧客には、受注生産で来年秋頃を目安に提供を開始する予定。営業体制としては、従来のオフィス製品の販売対象と重なるため、PaperLab専任のチームを用意するわけではなく、ビジネスプリンタの営業体制で提案を行っていく。エプソン販売の鈴村文徳・取締役販売推進本部長は、販売ターゲットについて、「価格はオープンプライスだが、導入に2000万円以上かかると考えている。そのため、それなりの規模の企業になるだろう」と説明。そのうえで、海外での販売も含めて、「3年後に100億円の売り上げを目指す」と、目標を語った。また、エプソン販売の佐伯社長は、「当社が得意とするビジネスインクジェットプリンタとPaperLabを組み合わせ、『循環型オフィス』を実現していくことを目指していきたい」と話し、オフィスにおける新たな紙の活用方法の普及を促すことに思いを込めた。