製品ラインアップと販売体制を強化

 富士通エフサス(濱場正明社長)は、自社プロダクトである長時間残業抑止ソリューション「IDリンク・マネージャー」のラインアップ強化と販売網の拡充に取り組んでいる。同社は、デジタルビジネスへの注力を進める富士通グループにあって、その先導役を果たすべく、「働き方改革」を重点分野として、デジタル変革の提案を強化している。結果として、同社の働き方改革ソリューションは、想定以上のスピードで成長し始めたようだ。(本多和幸)

 IDリンク・マネージャーは、終業時刻前になると従業員のPCに定時退社や残業申請を促すポップアップメッセージを表示させたり、場合によってはPCを強制的にシャットダウンさせるなどして、長時間残業を抑止するソフトウェア製品だ。2010年にオンプレミス型で提供を開始し、今年5月にはSaaS版も発売した。
 

桶谷良介
トータルソリューション
企画部長

 富士通エフサスの桶谷良介・ビジネス企画推進本部トータルソリューション企画部長は、この1年ほどで、従来と比べてIDリンク・マネージャーのニーズが急増していると説明する。「電通の過労死自殺が大きな話題となったことに加え、安倍政権も一億総活躍社会を実現するための最大のチャレンジとして、働き方改革を位置づけている。その結果、日本の社会全体として長時間残業の抑制が重要テーマとして扱われるようになり、メディアもそこにフォーカスするようになった。IDリンク・マネージャーはまさにそのためのソリューションであり、今年は首都圏だけでも案件数が100を超えるなど、昨年比で3倍の案件が出てきている」。

 ユーザー企業がIDリンク・マネージャーの導入を検討する理由は、厚生労働省の長時間労働・サービス残業への取り締まりへの対応といった「コンプライアンス」対応、「ワーク・ライフ・バランス」の実現、残業内容の見える化による「コスト削減」の三つにほぼ集約されるという。「ブラック企業でないことを証明できなければ新しい人材の確保も難しくなり、社員の定着率も低下してしまう状況」(桶谷部長)であることから、とくにコンプライアンスやワーク・ライフ・バランス対策については、ユーザー企業側の経営層も関心が高く、彼らやその意を受けた人事部門などがとにかく早急に手を打ちたいとベンダー側に相談を持ちかけるケースも多くなっている。IDリンク・マネージャーSaaS版は、そうしたニーズに応えたものといえる。

 IDリンク・マネージャーの導入実績は、今年6月末現在で59社、約15万8000ライセンスという規模だが、今年だけでも、大口の新規採用事例が相次いでいるほか、4月には、富士通本体が全社員3万6000人を対象に導入することを明らかにしている。もちろん、自社や他の富士通グループでも導入しており、IDリンク・マネージャーをどう活用して効果を上げていくかというリファレンスづくりに、富士通グループを挙げて取り組み、さらなる拡販を目指す。

 また、現在の販路は、富士通本体や富士通エフサスの直販にほぼ限られることから、顧客層も大企業が中心。しかし、桶谷部長は「従業員数50人以上の企業であれば効果が出る」とみており、パートナーの拡充による中堅・中小企業層へのアプローチも強化しつつある。現在、SaaS版は顧客ごとの占有環境を用意するシングルテナント方式で提供しているが、これに伴い、より低価格なマルチテナントでの提供も検討していく方針だ。