出遅れ感が否めない国内勢に勝算はあるか

 ニュータニックスをはじめとする海外勢のハイパーコンバージドインフラ(HCI)が注目を集めるなか、NEC・富士通の国内サーバーメーカーは、“HCIブランド”をもたないという点で、出遅れ感が否めない状況にある。両社はともに既在のサーバーブランドにHCI関連のソフトウェアを採用することでHCI製品としている。日本ヒューレット・パッカード(HPE)やDell EMCはHCIブランドを投入しているだけに、国内サーバーメーカーの巻き返しに注目が集まる。(安藤章司)

海外勢の新たな挑戦に
立ち向かう

 国内サーバー市場は、NEC・富士通の両社で50%近いシェアをもつ。海外勢は、これまでも価格攻勢やメーカー直販などでシェア切り崩しに努めてきたが、その牙城は崩れなかった。
 

 その状況は現在でも変わらないが、ニュータニックスが先陣を切り、HCIで国内サーバー市場に“風穴”を開けつつある。HPEが「SimpliVity(シンプリビティ)」、Dell EMCは「VxRail(ヴィエックスレール)」で追随している。
 

左からNECの上野勝之シニアエキスパート、掛川哲司シニアマネージャ、猿田智広氏、鈴木陸文マネージャー

 ニュータニックス、HPE、Dell EMCは、それぞれ独自のHCI製品の開発を進める。迎え撃つNEC・富士通の国内サーバーメーカーは、ヴイエムウェアやマイクロソフトのHCI向けソフトを自社のPCサーバーに実装。オープンなアーキテクチャで防衛戦を展開している。現時点でサーバーシェア全体を揺るがすまでには至っていないが、NECと富士通がHCIの技術進展に乗り遅れると、風穴がさらに拡大する可能性もゼロではない。

 NEC・富士通の強みは、ハードウェアからSIまで情報システムをワンストップで構築できる「総合力」にある。

 自社の大規模なデータセンター(DC)を活用したマネージドクラウドや、独自のパブリッククラウドと連携したハイブリッドクラウドが堅調。さらにはNECや富士通と長年にわたってビジネスパートナーの関係を保持してきた全国の販売網も海外勢より勝っていることから、サーバー販売で揺るぎないシェアを築いてきた。HCI戦でも、この強みを前面に出していく。

HCI商談数は
昨年度比3倍で推移

 富士通の藪田有司・ハイブリッドITオファリング統括部長は、「HCIの提案は、とりわけ中央省庁や自治体から評価が高い」と話す。公共系はもともと国内サーバーメーカーが強みとしているところだ。同時に民需系については、「富士通の総合的な問題解決力やサポート力が評価されている」(富士通の高地和隆・コンバージドプロダクト開発部部長)としている。もう一つは、「特定のハードウェアに縛られないオープンさが評価の対象になる」(同)とも語る。
 

富士通の高地和隆部長(左)と藪田有司統括部長

 メーカーとしては、自社製サーバーが売れることに越したことはない。だが、ベンダーロックインにつながる製品は、ユーザー企業が歓迎しない。NECや富士通は、そこを強く意識している。海外勢に目を向けると、アプライアンス(専用ハードウェア)として販売するケースが現時点では目立つ。

 実際、国内サーバーメーカーのHCI販売は、海外勢の攻勢にもかかわらず、好調に推移しているという。NECでは、サーバー仮想化案件のうち、「HCIを選択肢に入れるケースがすでに半数に達している」(NECの掛川哲司・プラットフォームソリューション技術部シニアマネージャ)と、急速にHCIへの引き合いが強まっている。同社では、「NECのプライベートやパブリックなどの各種クラウドとの連携を推進」(NECの上野勝之・ビジネスクリエイション本部シニアエキスパート)することで、ユーザーニーズに応えている。

 NECの今年度上期(4-9月期)のHCIへの引き合いは、昨年度下期に比べて「ほぼ倍増している」(NECの鈴木陸文・パートナーズプラットフォーム事業部マネージャー)。従来HCI用途の多くを占めた仮想デスクトップ(VDI)よりも、仮想サーバーの用途割合が増加。「仮想サーバーだけに限ってみればHCIの伸び率は、倍増以上で推移している」(NECパートナーズプラットフォーム事業部の猿田智広氏)と手応えを感じている。

 富士通は、ヴイエムウェアと日本マイクロソフトと共催で、ユーザー企業向けにHCI導入セミナーを8月から9月にかけて全国各地で開いたところ、「どの会場もほぼ満席」(藪田統括部長)とユーザーの関心の高さをうかがわせた。HCIの商談数も、「今年度に入ってから、昨年度比で実に3倍のペースで推移している」(同)と、うれしい悲鳴を上げる。

 サーバービジネスを巡っては、かつてパブリッククラウドでAWSなどの新興勢力の独走を許してしまった経緯がある。今回のHCIではNECも富士通も好調だとしているが、HCI市場は両社の見込みよりも急速に拡大していく可能性がある。新興勢力の台頭を押さえ込みつつ、自らもHCIを取り込んで国内サーバーシェアを守り切れるかどうか、NEC・富士通の実力が試されている。