自律型DBでクラウド市場の勢力図を変える

【米サンフランシスコ発】米オラクルは、年次プライベートイベント「Oracle Open World(OOW) 2017」を、現地時間の10月1日から5日までの5日間、米サンフランシスコで開催した。例年通り、非常に多くの新製品・サービスを発表したなかで、最大のトピックは、同社の屋台骨を支えるデータベース(DB)・ソフトウェア「Oracle Database」の次期製品を発表したことだ。“自律型(Autonomous)データベース”と銘打ったオラクルの新たなDBは、クラウドの世界で盟主AWSに対抗するための旗頭となるか。(本多和幸)

オラクル史上もっとも重要な発表

 ここ数年のOOWでは、創業者のラリー・エリソン会長兼CTOが初日のオープニングキーノートと中日の基調講演に2回登場し、初日にその年のOOWでフォーカスをあてるメッセージと新製品・サービス群のアウトラインを説明し、2回目の基調講演でいくつかの新製品・サービスをピックアップしてより詳しく解説するというパターンが恒例となっていた。しかし、今年は若干趣が違った。

 今回、エリソン会長がオープニングキーノートでまるまる1時間を使って説明したのは、ほぼOracle Databaseの次世代製品「Oracle Database 18c」についてのみだった。実際には、AIやブロックチェーンといった新しい技術を取り入れた他の製品・サービスが複数発表されているにもかかわらず、である。例年、OOWのエッセンスが凝縮されているエリソン会長のオープニングキーノートで、次世代DBに絞ったプレゼンをしたという事実に、同社、そしてエリソン会長にとってこの製品がいかに重要であるかがみてとれる。翌日の基調講演に登場したマーク・ハードCEOも、Oracle Database 18cについて、オラクルの歴史上もっとも重要な発表であるという趣旨のコメントをしている。
 
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ラリー・エリソン
会長兼CTO

 エリソン会長は、Oracle Database 18cについて、「世界初の完全自動化、自律型DB」と表現。「新しいタイプの機械学習が世に出てきて、自動車の世界では、自律型走行車も実現している。Oracle Database 18cは、まさにITの世界で同様のことを成し遂げた、われわれのこれまでの技術革新で最も重要なものといっていい。可能な限り人の手の介入を減らし、機械による自動化を進めることで、人為的なミスやエラー、悪意のある行動が介在する余地が減る。だから、Oracle Database 18cは最も安全にデータを保全できるDBといえる。私が自分の航空機を運転するときも、あまり認めたくないが、自分で操縦するよりオートパイロットのほうがうまくいく。そんなイメージで理解してほしい」と、上機嫌でアピールした。

 具体的には、Oracle Database 18cは、機械学習により、DBのチューニングを継続的に自動化するほか、アップグレードやパッチの適用も自動で実行し、稼働しながらセキュリティ・アップデートを自動適用するという。また、コンピューティングやストレージのリソースの拡張・縮小も、自動でスケーリングする。さらにエリソン会長は、「稼働率は、99.995%をSLAで保証する。ダウンタイムは年間で30分以下。ほかのベンダーが“高い信頼性と可用性”と口にするのは単なるマーケティング上の言葉だ」とも話し、オラクルはレベルが違うといわんばかりに胸を張った。

Redshiftとの徹底比較でPR

 Oracle Database 18cがいかに画期的かについては、主にAmazon Web Services(AWS)のデータウェアハウス(DWH)である「Amazon Redshift」との対比で語られたのも特筆すべきだろう。エリソン会長は、「Redshiftはワークロードに合わせて自動的にプロセッサを増やすことはできず、コンピューティングもストレージも(Oracle Database 18cより)消費量が多くなり、手動管理のコストもかかる。EC2(Elastic Compute Cloud)が名前に反してまったくElastic(柔軟)ではないように、Amazonのシステムは本当に柔軟性がない。Redshiftで動かしているどんなワークロードであろうと、(Oracle Database 18cのクラウドサービスとしてリリースする予定の)Oracle Autonomous Database Cloudに移行した場合、利用料を半額以下にすることを契約書に書き込む」と宣言した。

 さらに、自身のデモでは、金融業界、保険業界、小売業界の実際のデータ分析ワークロードを、Oracle Autonomous Database Cloud、AWSのIaaS上で稼働させるOracle Database 18c、そしてAmazon Redshiftでそれぞれ実行した場合のパフォーマンスとコストを示してみせた。例えば、金融業界のデータ分析で処理が完了するまでの時間とかかった利用料金は、Oracle Autonomous Database Cloudが34秒、0.04ドルだったのに対し、Oracle Database 18c on AWSは255秒、0.23ドルという結果になった。また、別の金融業界のデータ分析ワークロードの処理をOracle Autonomous Database CloudとAmazon Redshiftで比べた場合、Oracle Autonomous Database Cloudが23秒、利用料金0.03ドルで完了したのに対し、Amazon Redshiftは247秒、0.27ドルかかった。

 オラクルは、Oracle DBを自社IaaS上で動かしたときにパフォーマンスが最大化するように製品・サービス開発を進めていて、DBのライセンス体系も、AWSやAzureに乗せた場合は割高になることがある。少なくとも、Oracle Database on AWSのデモ結果については、オラクル自身が意図した結果といえよう。また、デモで示されたコストは秒単位の従量課金に換算したものだと思われるが、実際は、現時点でオラクルクラウドには時間当たりの従量課金モデルしか存在しないことには留意する必要がある。それでも、エリソン会長は「AWSに対して9倍から15倍のコストメリットがある」と自信をみせており、インパクトのあるメッセージだ。

 Oracle Database 18cは、DWH用途のAnalyticsバージョンを先行して今年12月にリリースし、OLTPバージョンを来年6月にリリースする予定だ。「自律型」の機能が用途によって異なるため、リリース時期がずれるのだという。米ガートナーが発表している「Data Management Solutions for Analytics」部門のマジッククアドラントをみると、オラクルはリーダーポジションにいるが、AWSも年々その地位に近づいてきている。昨年、IaaSでAWSにライバル宣言し、全方位でクラウドビジネスを拡大しようとしているオラクルにとって、Oracle Database 18cは、DBで培ってきた圧倒的な強みをなんとかクラウドビジネスにも反映させたいという危機感と期待が交錯する製品といえそうだ。