最先端のネットワークテクノロジーが集結

 クラウドやIoTなどを支えるネットワーク。この分野では、サーバーやストレージと同様に仮想化を実現するソフトウェア・ディファインド・ネットワーク(SDN)が注目を集めている。ITの最新技術を生み出し続けているシリコンバレーで9月27日から29日の三日間、テクノロジー・カンファレンス「NetEvents Global Press & Analyst Summit」が開催された。今年はクラウド、IoT、AI、セキュリティがテーマだったが、そのなかで最も熱かったのが、SDNベンダーだった。(山下彰子)

SDNソフトウェアが熱い

 SDNは、これまでネットワークスイッチが担っていた制御の機能をコントローラーに集約させ、ソフトウェアで制御・管理を行う技術だ。ソフトウェアベースで管理するため、ネットワークの変更や機器の追加が容易にできる、という特徴がある。現在のSDNは、コントローラーに自社のソフトウェアをバンドルした状態で提供するのが一般的。そのため、コントローラー、スイッチ、SDNソフトウェアが同一ベンダーで統一される。そこを覆そうとしているのがDell EMCだ。
 
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Dell EMCのBaher・
Jeff・Sr. Director,
Product & Technical
Marketing Networking &
Service Provider Solutions

 Dell EMCのBaher・Jeff・Sr. Director, Product & Technical Marketing Networking & Service Provider Solutionsは、「データセンターの現場はオープンネットワークの方向に向かっている。これまではSDNコントローラーにソフトウェアをバンドルして提供していた。しかし、今はソフトウェアを選択したい、オープンにしたい、というニーズが高まっている。Dell EMCはハードウェアとソフトウェアを切り離す」と説明した。また、こうしたニーズは、今後拡大していくだろうと予想する。

 しかし、ハードウェアベンダーであるDell EMCにとって、ハードウェアとソフトウェアを切り離すということは、売り上げの縮小につながらないのだろうか。Jeff氏は、「すでにネットワークのハードウェアでは世界1位のシェアをもっている」とし、その先の取り組みとしてソフトウェアの売り上げを伸ばしていきたい考えだ。

 同じく、ソフトウェアの分野に注力しているのが今、一番勢いのあるSDNベンチャーのBig Switch Networksだ。2010年設立の同社は、Dell EMCと同様にハードウェアとソフトウェアを切り離すという思想をもち、ソフトウェアのみを提供。そのため、前述のDell EMCや台湾のEdgecore Networksのハードウェアに自社のSDNソフトウェアを乗せて提供している。また、Big Switchの製品はGoogle、Facebook、Amazonなどに採用されている。

 特徴的なのが、「Big Cloud Fabric」の機能だ。Big Cloud Fabricは、ネットワークを仮想化する機能で、Open APIを介してクラウドインフラと連携させることで、ワークロードのステータスやビジネスニーズに合わせてオンデマンドにネットワークリソースを割り当てることができる。既存のネットワークの制限に縛られないネットワークアーキテクチャを使用することで柔軟な構成を実現する。
 
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Big Switch Networksの
Gregg・Holzrichter・
VP Marketing & CMO

 14年に日本法人を設立したほか、オーストラリア、シンガポール、中国などにも拠点を構える。従業員は200人以上で、顧客数も200社を超え、順調に成長している。Gregg・Holzrichter・VP Marketing & CMOは、「VMwareの成長をたどるように伸びている。ネットワーク業界のVMwareになりたい」と意気込みを語る。

ネットワークの分離と自動構築

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NetFoundryの
Galeal・Zino・Founder

 IoTのように多数あるデバイスの一つひとつにセキュリティ対策を施すのは難しい。そこでIoT向けのセキュリティとして注目を集めているのが、やはりSDNだ。ソフトウェアでネットワークを構築、管理できるため、IoTのネットワークを分離すればセキュアな環境を保つことができるからだ。そこからもう一歩進み、セキュアなSDNを提供しているのがNetFoundry。17年2月に設立したばかりの、まさにSDNのスタートアップである。

 NetFoundryのSDNの特徴は「柔軟性のあるセキュリティ」だ。斬新なのが、アプリケーションごとにネットワークを割り振る、という考え方。ネットワークでは、指定したアプリケーションやそれに関係するデータのみがやり取りを行うことができる。ウイルスやマルウェアなど、悪意のある脅威だけではなく、指定したアプリケーション以外のデータもブロックする。この選別を行っているのがポリシーコントローラーだ。アプリケーションやデータがポリシーコントローラーを通過する際に、どのネットワークに切り替えるか判断をする。万が一、ネットワークにウイルスなどが侵入した場合は、ソフトウェアで経路を変え、切り離すことができる。この柔軟さはSDNだからこそである。

 Galeal・Zino・Founderは「設立して半年ほどだが、従業員は約50人に達した。顧客数は、10社ほどで、年末までには倍の20社まで増やしたい」と語る。
 
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Apstraの
KARAM・MANSOUR・CEO
and Founder

 新しい技術が生まれるSDNのなかで、「SDNよりも進んだテクノロジー」(KARAM・MANSOUR・CEO and Founder)といわれているのが、Apstraのネットワークシステム「AOS(Apstra Operating System)」だ。

 ベンダーに依存しないインテントベースのネットワークシステムで、物理ネットワークデバイスを抽象化し、スイッチ製品に依存せずに、ユーザーがつくりたいネットワークシステムをインテント(意図)にもとづいて設計するだけで、設定から運用までを自動的に行う。従来の、選定したスイッチ製品の機能に合わせた設計ではなく、実現したいネットワークデザインを主軸にした設計ができる。

 このインテントベースのネットワークシステムは業界初にして唯一のテクノロジーだ。NetEventsでも注目を集め、「ネットワークのパイオニアにあたる」と先進性が評価され、HOT START-UPSのクラウド/データセンター賞に選ばれた。また、今年7月には東京エレクトロン デバイスと販売パートナー契約を結び、日本市場での提案も開始している。