次の10年に向けて新たなステージへ

 兵庫県神戸市を日本屈指のICT先進地へ。設立から10年が経過した地域ICT推進協議会(COPLI)は、時代の変化をうけ、次の10年に向けた新しい取り組みを進めている。会員の企業・団体による交流・融合や人材育成の強化。神戸発の製品・サービスの創造。さらに、ユーザー企業の投資意欲を活性化することによって、将来的には東京や大阪に匹敵するICT市場を形成することも模索している。(佐相彰彦)

設立から10年で
時代が変化

 2007年4月に神戸マルチメディア・インターネット協議会と阪神・淡路マルチメディア産業交流会が統合して発足したCOPLI。民・学・産と行政によるコンソーシアムとして、これまでICT技術を通じて地域の活性化に取り組んできた。現在では兵庫・神戸地域を中心に100以上の企業や団体が会員として参加する規模にまで成長している。
 
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(左から)力宗幸男会長、山本裕計副会長、大寺 亮幹事、神戸市の長井伸晃係長

 力宗幸男会長(ムーブ技術顧問)は、「阪神・淡路大震災の復興を目的に二つのコンソーシアムが発足。10年程度が経過した時期にCOPLIとして統合された。これは、ICTを通じて震災復興を支援するという役割をある程度は果たしたことが理由」と前置きしたうえで、「さらにCOPLIの設立から10年が経過し、時代の変化とともにコンソーシアムが果たす役割も変わらなければならないと実感している。そこで、次の10年に向けて新たな取り組みを進めることにした」としている。

 COPLIでは情報通信技術に関するセミナーなどの開催、ICT分野の企業同士や企業と人材のマッチングなどに取り組んできた。具体的な行動指針として、会員の技術力の研鑽に努めながら地域に根ざした産学連携を活発にしてICTを活用した高度な製品・サービスの創出に寄与する「技術向上」、地域の安心・安全な情報化社会の実現に寄与するとともに、ICTの利活用で地域経済の活性化に取り組む「地域貢献」、次世代を担う地域のICT人材の育成に寄与する「人材育成」、会員相互の交流を通じて各会員の利益向上に努める「交流・融合」の四点を掲げてきた。
 
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 力宗会長は、「これまでの取り組みを通じて、多くの人々の暮らしを豊かにしてきたと自負している。COPLIの基盤自体は成熟してきたが、一方でここ数年のICTの発展がもたらす環境変化によって、新たな課題が生まれつつある。次世代につなげていくためには、現在の環境に沿った視点で改めて地域経済の活性化と、地域や市民への貢献に焦点をあてて行動していく必要がある」と現状を分析する。

ユーザー企業とのマッチングを
積極的に

 具体的には、どのように取り組んでいくのか。山本裕計副会長(アイクラフト代表取締役)は、「ユーザー企業とのマッチングを増やしていき、会員のビジネスメリットを追求していく」との方針を示す。COPLIでは、1年に1回のペースでビジネスマッチングを開催していて、「前回は、100件ほどの問い合わせがあった」という。他業種から問い合わせがきているため、「そのなかで会員同士が強みを生かして協業を強化する仕組みを検討していく」としている。

 景気が上向いていることから、当面は案件が増えると捉えている。そのなかで、会員同士の協業によって新しい製品・サービスが生まれることになれば、COPLIが推奨する製品・サービスとして、他地域に横展開できる。そのため、他地域の業界団体との連携も視野に入れており、「神戸発のソリューションを増やすことで他の業界団体がCOPLIと組むメリットを実感していただけるようにしたい」(力宗会長)との考えだ。

学生にSIerの魅力を
アピール

 案件の増加に伴って課題にあがってくるのが人材不足だ。そこで、COPLIでは「最近では、とくに学生のインターンシップを積極的に採り入れている」(力宗会長)という。人材育成を担当する大寺亮幹事は、「まずは就職フェアに出展している」とのこと。インターンシップを含めて人材を確保することに力を注ぎ、前回は10人弱が就職フェアを通じて入社した。また、大寺幹事は神戸情報大学院大学の情報技術研究科情報システム専攻の講師も務めていて、学生との交流が深いことからも、優秀な人材の確保に期待がかかる。

 また、COPLIでは入社後の人材育成を強化するため、会員間の合同社員研修会を実施。加えて、「若手のつながりが希薄」(大寺幹事)との判断から、35歳未満の会員の社員を対象にセミナーやアイデアソンなどで、「新しい製品・サービスを生み出すきっかけをつくる」(大寺幹事)としている。

大阪と比べて
市場規模20%未満を打破

 COPLIの会員数は100を超えているが、「歴史が長く、正直いって古手のSIerの会員が多いのも事実」(力宗会長)と打ち明けており、スタートアップが会員として参加するサイクル整備も目指している。長井伸晃・神戸市企画調整局創造都市推進部ICT創造・事業推進担当係長は、「行政の立場からも、スタートアップを育成する環境を整えて、神戸に新しい風を吹き込むエコシステムを構築していく」という。

 東京と比べれば圧倒的に小さく、大阪と比べても20%に満たないといわれている神戸のICT市場。神戸は、地方都市が取り組むニアショア開発には適さない。神戸発の製品やサービスがどこまで通用するのか。これまでとは異なった取り組みが必要となる。