合弁事業化でライセンスを正式取得
【上海発】NTTコミュニケーションズ(庄司哲也社長)は、中国のグループ会社である上海奈盛通信科技(蘇振宇総経理)を通じて、「上海 プードン データセンター」(上海浦東DC)の本格的な提供を開始した。電源工事の遅延やライセンス取得をめぐり、サービス提供に2年以上の時間を要した同DCが、ついに動き出したのだ。約300項目の独自基準を満たした「Nexcenter」ブランドで提供する中国本土で初のDCとなる。(上海支局 真鍋 武)
NTT Com Chinaの今津二郎 常務副総経理(左)と上海奈盛通信科技の蘇振宇総経理
上海浦東DCは、NTT Comが「設備設計・構築・運用までのすべてを自ら実施するDC」として2014年11月に発表した。サーバールーム面積は約2600平方メートル、ラック換算では1000ラック規模。しかし、実際には電源工事が遅れ、サービスの提供は開始していなかった。加えて、当初は香港のNTT Com Asiaが100%出資で設立した上海奈盛通信科技を通じて、中国本土でDCサービスを展開するために必要な「増値電信業務経営許可証」の取得を目指していたが、独資では難しく、整備を進める過程で方針を見直し、現地企業との合弁事業化に舵を切った。
16年12月、通信サービスを提供する上海二六三通信(263)と手を組み、上海奈盛通信科技の資本構成を変更。資本金約2億2000万元で、263が51%、NTT Com Asiaが49%を出資する合弁会社に切り替えた。これを受けて、念願だった増値電信業務経営許可証を正式に取得。今年6月、本格的なサービスの提供に漕ぎつけた。
中国のDC市場は高成長を続けており、中国IDC圏の研究報告によれば、17年から19年にかけての市場規模は年平均約37%の勢いで成長する見込み。地場の通信キャリアや専業の事業者などが大規模DCを続々と建設し、競争関係は激しくなっているが、上海浦東DCは「Nexcenter」の冠をもつ高品質が武器となる。同DCの電力供給の可用性は、中国本土でも最高レベルの99.9999%を誇る。設備品質はTier 3レベルで、Tier 4へのアップグレードも可能だ。
また、提案活動を担うNTT通信系統(中国)(NTT Com China)では、SIサービスや合弁相手の263がもつ通信サービスなどの商材をDCと組み合わせ、複合的なソリューションとして提案することで、競合との差異化を図る。同社の今津二郎常務副総経理は、「コロケーションだけでは競争力を発揮できない場面があるが、SIに加え、263がもつ地場のサービスも組み合わせれば、コスト競争力をもつことができる」と優位性を語る。とくに、IoTやAI、ビッグデータなどの次世代ITを活用したソリューションは、中国政府が続々と政策を打ち出し、重要視している領域なだけに、今後の商機が大きい。
主なターゲット層は、日系を含む多国籍企業だ。品質への要求が高く、Nexcenterの強みを発揮できる。NTTグループは、グローバル各地域でDC事業を展開しているが、既存顧客が中国拠点でグローバルと同じ品質・仕様のDCを使いたいというニーズも多い。提案活動は開始してからまだ半年程度だが、今津常務副総経理は、「非常に感触はいい。すでに10社ほどの顧客を獲得した」と明かす。
さらに今後は、「中国サイバーセキュリティ法」の施行に伴い、外資を含む中国の企業が重要データの国内保存を義務づけられる可能性がある。法規制への賛否はともかくとして、DC事業の観点では、外資企業向けの新たなビジネスチャンスとなる。
今後の目標について、上海奈盛通信科技の蘇振宇総経理は、「一刻も早い満床を目指す」と意欲を示した。