DXの一部と捉えてSI案件につなげる

 シェアリングエコノミー(共有経済、シェアエコ)の国内取引金額が、2023年に9400億円規模に達する見込みだと野村総合研究所(NRI)が明らかにした。NRIでは、国内シェアエコの動きを、既存企業のデジタルトランスフォーメーション(デジタル転換=DX)の主要な一部と位置づける。既存大手ユーザー企業がDXを進めていく過程で、シェアエコの要素を取り込んでいく動きが活発化すれば、まとまった規模のシステム投資を手にできるとにらんでいるわけだ。シェアエコ単体ではなく、既存ユーザーのDX投資と捉えれば、新規のSIビジネスにつなげる可能性が一段と高まる。(安藤章司)

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此本臣吾社長

 シェアエコは、モノや場所、人の空いている時間をうまく皆で共有して、安く、便利に使うことを主眼としている。NRIの調査によれば、取引金額ベースで17年の国内シェアエコ市場規模は2660億円の見込み。23年までは年率平均23.4%で成長して9400億円規模へ拡大すると予測している。これまではITを介して個人間(C2C)で直接やりとりするサービスが目立っていたが、この領域においてNRIのような大手SIerがまとまった受注をするのは、正直、難しいといわざるを得ない。

 そこで、NRIが注目しているのは、同社が主な顧客ターゲットとしている大企業ユーザーのデジタルトランスフォーメーション(DX)ニーズだ。DXはデジタル時代に競争力を失った事業を、時代に合ったかたちに転換することをいい、事業のスクラップ&ビルドを伴う。こうした「DXの重要な要素の一つにシェアリングエコノミーが含まれる」(此本臣吾社長)とみている。

 とはいえ、自動車や住宅、技能などがシェア(共有)の対象とされるが、現状では自動車は、タクシーと競合し、住宅では旅館などと競合、技能についても家事代行、観光ガイド、趣味教室といった既存サービスと競合してしまう。しかし「民泊解禁」のように、規制を盾にした「守り」に限界があるのも事実。攻めの一手としてDXに乗り出す企業ニーズを取り込んでいくことで、NRIのデジタルビジネスの成長につなげたい考えだ。

 具体的には、個人間でシェアする「C2C」の類型だけでなく、企業間(B2B)、自治体などを巻き込んだ地域型、さらには仲介を省くという文脈のなかで団体や個人を問わない「N2N」の直接取引をシェアエコの範囲と捉えれば、ビジネスの幅がぐんと広がる。こうしたシェアリングサービスを支えるマッチングやレビュー、決済などのITプラットフォームや、個別の業務システムの刷新需要などが期待できる。

 足もとをみれば、国内のシェアエコ市場は、欧米や中国などと比較して小さい。隣国の中国のシェアエコ市場は、16年時点ですでに57兆円規模(取引金額ベース)に達しており、20年までは年平均で約40%成長し、GDPの10%に相当する220兆円規模へと拡大する見込み。

 中国の場合、既存産業の仕組みが固まる前にシェアエコが台頭した「成長国型」のシェアエコであり、これがそのまま日本にあてはまるわけではない。すでに既存の仕組みが出来上がっているところに、「成長国型」のシェアエコは馴じみにくいからだ。だからといってシェアエコと距離を置くのではなく、シェアエコを既存大手企業のDX需要と捉え、既存事業のスクラップ&ビルドに伴うIT投資をうまく取り込んでいく。こうしたNRIの戦略は、SIerがシェアエコでビジネスを伸ばすヒントになるのではないだろうか。