富士フイルムホールディングス(富士フイルムHD)が1月31日、米国のゼロックスコーポレーション(ゼロックス)の株式の50.1%を取得。米ゼロックスと富士ゼロックスを経営統合すると発表した。これにより世界トップクラスの事務機器メーカーが誕生する。しかし、今後プリンタの需要が低迷していくという見方が強いなか、富士フイルムHDはどのような成長ビジョンを描いているのか。これまでの富士フイルムHD、米ゼロックス、そして富士ゼロックスの関係を整理しながらその方向性を占う。(山下彰子)

資金持ち出しなしで
米ゼロックスを買収

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富士ゼロックス
栗原 博
代表取締役社長

 今回の買収、統合の中心にいる富士ゼロックス(栗原博社長)は、富士フイルムHDが50%、当時の英国企業であったランク・ゼロックス(現、米ゼロックス)が50%出資して1962年に設立した事務機器メーカーだ。その後、出資率は富士フイルムHDが75%、米ゼロックスが25%となった。

 今回の統合は、富士ゼロックスが富士フイルムHD所有の富士ゼロックス全株式を6710億円で買ったことから始まる。富士フイルムHDは、富士ゼロックス株を売ったことで得た資金で米ゼロックスの新株発行61億ドル(約6710億円)を取得した。つまり、富士フイルムHDは資金を持ち出すことなく米ゼロックスを買い入れたことになる。なお、米ゼロックスは株主を説得するためか、25億ドルの特別配当を実施した。

 統合することで、今後の製品戦略はどうなるのか。オフィス分野では、米ゼロックスは一部をEMS企業に生産を委託しているが、残りの複合機などは富士ゼロックスが提供してきた。

 一方、商業印刷向けのデジタル印刷機に関しては、乾式電子写真方式におけるプロダクションプリンタの最上位機種「Xerox iGenシリーズ」は米ゼロックスが、それ以下の「Iridesse Production Press」「Versant 3100 Press」などは富士ゼロックスが開発・生産している。現在、富士ゼロックスはXerox iGenシリーズを米ゼロックスから購入しているわけだが、今回の統合により商業印刷向けのデジタル印刷機の開発・生産体制を一本化できる。生産拠点の統廃合、開発体制の再編は当然のことといえるだろう。販路整理も必要だ。富士ゼロックスは日本を含むアジア、オーストラリアなど、米ゼロックスは欧米など他の地域で活動している。「ワールドワイドで一貫した経営戦略に基づくオペレーションを行う」としているが、詳細は未定だ。

 富士ゼロックスと米ゼロックスの重複する部門をスマートにし、長期低迷を続けてきた米ゼロックスの体制を立て直すためにも、国内外1万人の人員削減を実施するという。

保管型から消費型へ、
印刷する場所も変わる

 オフィスのペーパーレス化が進むことで印刷枚数が激減し、事務機器の市場は縮小していく――よく聞く話だ。市場縮小の一番のネックは印刷枚数ということ。ところが業界関係者は一様に「オフィスの印刷枚数は減っていない」と話す。日本製紙連合会の資料によると、印刷・情報用紙の需要は05年の約1193万トンをピークに緩やかに減少しており、16年には867万トンになった。確かに国内の印刷用紙の消費量は減少傾向にある。ところが、減少が顕著なのは家庭での使用量で、オフィスでの使用量はほぼ変わっていないと業界関係者はいう。

 情報を保管したり、共有するために紙に出力する「保管型」や「共有型」の消費がこれまでの事務機器市場を支えていた。今は、もともと紙の資料さえもPDFなどのデータに変換し、サーバーやクラウドに保存する。サーバーやクラウドにある情報はチームメンバーであれば誰でも閲覧できるので、出力して共有する必要がない。保存型、共有型の紙の消費は減少している。代わりに増えているのが、「作業をする際に、サーバーやクラウドにある情報をディスプレイで閲覧するだけではなく、紙に出力して手元に置く」ニーズだ。さらに、オフィスのオープンスペース化が進み、毎日席が変わる。その日に使う資料を朝に出力し、帰宅時には処分する。つまり「消費型」の紙の使用へと移行している。

 今後はテレワーク人口が増えることで、在宅勤務者の自宅での印刷、コワーキングスペースでの印刷など、オフィス以外の場所での印刷が増えていくだろう。そのとき、富士ゼロックスの強みとなるのが、コンビニエンスストアの「セブン-イレブン」に設置している同社のマルチコピー機だ。クラウドと連携し、クラウド上の資料をコンビニのコピー機で出力できる。コピー料金は、後払いで企業にまとめて請求できる法人契約プランもある。一例ではあるが、こうした複合機、マルチコピー機を通したオフィスの生産性向上の取り組みを富士ゼロックスは進めており、オフィス、オフィス以外の両方の出力ニーズを取り込んでいく。

 18年の年頭所感で、富士ゼロックスの栗原社長は、「新しいテクノロジーをこれまでの事務機器のビジネスとリンクさせる、その可能性がみえてきた」と語った。クラウドソリューションや新たなソリューションを日本、欧米に展開していくという。ここで生み出したソリューション、ノウハウは米ゼロックスがもつ市場でも展開できるのではないだろうか。日本で生まれたノウハウが米ゼロックスを通して世界に広がるかもしれない。