新興企業を中心とした国内ビジネスチャット市場の動きが過熱の様相だ。2月に入り、ワークスモバイルジャパン(石黒豊社長)、ChatWork(山本敏行代表取締役)がビジネスの現況や戦略を発表。それぞれが機能の強化やパートナー企業との協業拡大などの方針を打ち出し、国内企業のビジネスチャット導入に拍車をかける。(前田幸慧)

 コンシューマ市場においてスマートフォンが普及したことで、コミュニケーションツールとしての地位を確立したチャット。近年は法人においてもスマートフォンの導入が広がっており、ビジネスの場面においても、チャットの利用が加速している。

 LINEの兄弟会社であるワークスモバイルジャパンは、2016年1月に「Works Mobile」の名称で法人向けチャットサービスの展開を始め、昨年2月に「LINE WORKS」と名称変更を行っている。同社は、このLINE WORKSの提供開始1周年を記念したカンファレンスを2月2日に開催し、この場で、有料の契約企業数が約1万社となったことを明らかにした。「昨年1年間で、顧客社数は7.8倍になった」と、石黒社長は実績をアピールする。

 国内個人向けチャットサービスとしては、デファクトスタンダードとなっている「LINE」と同じ操作感で、かつLINEとつながる唯一のツールであることの強みは絶大だ。当日は、野村証券やミズノといった大企業の導入事例を紹介。サービスの利用層としては、従業員100人以下の中小企業が87%を占めるという。KDDI、ソフトバンク、大塚商会をはじめとする現在29社の販売パートナーとともに、短期間で実績を上げることに成功している。

 今後はボットを通じたソリューション連携やAIの活用を推進する方針。また、パートナーのソリューションとの連携に力を入れている同社は新たに、MAツールを提供するマルケト、さらに、SAPジャパン、豆蔵との協業を発表。SAPジャパンと豆蔵とは、クラウドERP「SAP Business ByDesign」、中小企業向けERP「SAP Business One」と豆蔵のチャットボット「MZbot」とLINE WORKSの連携によって、LINE WORKSを使い、在庫確認、発注処理などをRPAで代行するという。

 ビジネスチャット「ChatWork」を提供しているChatWorkも、2月8日に記者説明会を開催。誰でも使える、シンプルなUIであることを特徴とする同サービスは、223か国・地域で計16万3000社以上が導入し、「日本最大級」であるとしている。ChatWorkは無料で使い始められるフリーミアムモデルを採っているため有料契約社数は不明だが、提供の開始が11年と早く、ビジネスチャット市場において先行するとみられる。

 成長戦略として、エンタープライズ市場への参入、チャットを起点としたプラットフォーム構想、グローバル展開を三本柱に据える。現在は直販が中心だが、パートナー経由による販売も年内には開始する計画だ。プラットフォーム構想では、受付、経費精算、電話対応といったツールとのAPI連携に加え、電話代行などの「労働集約型サービスと連携する」と、山本代表取締役は説明する。

 また、昨年11月には、海外のビジネスチャット「Slack」の日本語版がローンチした。もともと日本語版の提供以前から国内で多数の顧客を獲得しているだけに、今後大きく伸長する可能性が高い。現状はツールそのものの特徴やベンダーのビジネス戦略に違いがみえるが、チャットを中心としたソリューション連携や業務効率化が大きな方向性として浮かび上がる。ビジネスチャット市場は加熱しそうだ。