ITベンダーや業界団体が「中小企業共通EDI標準」の普及を図るためのコンソーシアム「つなぐITコンソーシアム」を設立した。中小企業がITの力を使い、生産性をどれだけ高められるか、そして成長のためのデータドリブンなビジネスモデルの基盤を構築できるかは、日本の国力を左右する問題だ。中小企業共通EDI標準やコンソーシアムの活動が課題解決の切り札になるか。(本多和幸)

 受発注の処理業務はほぼすべての企業に存在する業務であり、大企業ではEDIによる自動化が進んでいる。ただし、発注側企業によってシステムが異なり、独自のデータフォーマットで発注するため、受注側企業はさまざまなシステム・仕様に対応しなければならない。取引先ごとに個別対応が必要となると、当然、中小企業にとっては負担が大きくなる。そのため、例えば多重下請け構造をもつ大手製造業のサプライチェーンなどでも、EDI導入によるサプライチェーンのIT化が図られているのは、「せいぜいティア2くらいまでで、さらに下層のプロセスを担う中小企業では電話やファックスによる受発注情報のやり取りがいまだに主流」(関係者)だという。人材の確保という課題がすでに現実のものとして目の前に立ちはだかっている中小企業にとっては、業務効率化と生産性向上のためにも解決すべき課題であり、データを活用した新しいビジネスモデルを考える基礎をつくるという観点でも、サプライチェーンのIT化は急務といえよう。

 こうした問題意識は10年近く前から業界内で顕在化しており、経済産業省の事業で課題解決に動いた経緯もあるが、なかなか成果は得られなかった。しかし、中小企業庁が2016年度事業で「中小企業共通EDI標準」の策定に乗り出したことで、状況は大きく変わるかもしれない。中小企業共通EDI標準は文字通り、受発注業務における企業、業種の垣根を越えたデータ連携を実現するための共通仕様。受発注企業の双方が中小企業共通EDI標準に対応した業務アプリケーションを使い、そのデータのやり取りを中小企業共通EDI標準に準拠したEDIサービスのプロバイダが仲介することで、データ項目のすり合わせなどをしなくても標準的な項目のデータ交換ができるようにする。策定の過程では、さまざまな業界、地域をフィールドに12の実証事業を行い、中小企業共通EDI標準の効果を探った。その結果、中小企業では50%を超える業務時間の削減効果が表れたという。

 しかし、標準仕様をつくっただけでは問題は解決しない。つなぐITコンソーシアムは、この中小企業共通EDI標準を普及させることを目的に発足した。EDIサービスプロバイダや業務アプリベンダーのほか、IT業界団体も会員に名を連ね、事務局はITコーディネータ協会が務める。中小企業共通EDI標準策定事業を手がけた中企庁はもちろんのこと、日本商工会議所、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会とも協力体制を構築し、ユーザーとなる中小企業側にリーチするためのチャネルも確保しているという。会員企業・団体のある関係者は、「ベンダー、ユーザーへの導入支援機関、ユーザー、さらには中小企業と取引関係のある大企業なども含め、中小企業共通EDI標準に対する多面的な理解と啓発を進めていくことが大事」と話す。例えば業務アプリベンダーの動きをみても、中小企業共通EDI標準への関心についてはベンダーごとに濃淡の差が大きいという。認知度を高め、広く関係者を巻き込んでいくための有効な施策を打てるかが課題だ。