本間洋副社長が6月19日付で社長に昇格する。3か年中期経営計画の最終年度、設立30周年、年商2兆円の大台を達成した節目の年に社長を引き継ぐ。本間次期社長に託された目標は、グローバルのSI市場でトップ集団での存在感を一段と増すこと。とくに巨大SI市場である北米でのランクアップが強く求められている。本間次期社長の経営指揮のもとで、NTTデータが何を目指していくのかをレポートする。(安藤章司)

既存SIと新領域の比率が逆転する


 本間次期社長が掲げた重点は「デジタルとグローバルが成長の要」「グローバルでの質を伴った成長の加速」「技術革新による価値創造の強化」の三つ。開口一番に指摘した「デジタル」とは、AI/IoT、クラウドに代表される新規性の高いITシステムだ。ここが強くないと二つめに挙げた「グローバル」でも勝てない。だからこそ「革新的な技術」の取り込みに力を入れる。
 
岩本敏男社長(左)と本間洋次期社長

本間 洋(ほんまよう)、1956年生まれ。
80年、日本電信電話公社(現NTT)に入社。2013年、常務執行役員第三法人事業本部長。
16年、代表取締役副社長執行役員。18年6月19日、代表取締役社長就任予定。
趣味は犬の散歩、週一回の水泳、読書。

 NTTデータの調べによれば、2014年当時は基幹業務をはじめとする既存SIが9割、デジタル新領域のSIが1割の市場ニーズの構成比だった。しかし20年には、これが65%対35%の比率に変わり、25年にはデジタル新領域が60%へと拡大。市場の構成比が既存SIと逆転すると予測している。NTTデータがこれまで強みとしてきた既存SIと、これから成長が見込めるデジタル新領域のバイモーダル(二刀流)戦略を推し進めることで、グローバルSI市場で「トップ5に入ることを目指していく」(本間次期社長)考えだ。
 

米国での“つまずき”をどう乗り越えるか


 カギを握るのは世界最大のIT市場である北米での成長だ。しかし、その肝心の米国で早くも「競争優位性が十分に発揮できない恐れ」(岩本敏男社長)が出始めている。今年度(19年3月期)の北米での売り上げ見通しを、前年度比0.9%減の4240億円としている。今年度から日本会計基準からIFRS(国際会計基準)へ切り替えたことで、昨年度の数字はIFRSベースに換算し直している。

 進出が早かった欧州を中心とするEMEA(欧州・中東・アフリカ地域)/中南米の売り上げは、同9.2%増の4230億円と好調に推移する見込みとは対照的だ。本間次期社長は、就任早々、北米での“つまずき”を立て直す仕事に直面することになる。

 本間社長が二つめに掲げた「質を伴った成長」とは、この北米での“つまずき”を念頭に置いたものとみられる。せっかく北米でM&Aを成功させても、競争が激しい北米ではすぐにビジネスモデルが陳腐化してしまう危険性がある。このため、北米の最新の技術革新を常に取り入れ、人材を育成していかなければ「質を伴った成長」は難しい。

 NTTデータでは、昨年度、旧デルのITサービス事業部門を約200億円の巨費を投じてPMI(M&A後の組織統合)を実施。今年度上半期にも50億円の費用を計上してPIMを早期に完了させ、NTTデータグループとしての総合力を発揮できるようしていく。さらに、今期、研究開発費に約100億円を投じて、AIやIoT、クラウドといった新領域の技術習得や生産技術の一段の向上に努める。
 

25年にグローバルでトップ5に


 ここで、NTTデータのグローバル事業戦略を簡単に振り返ってみよう。まず国内を中心にSIerとして初めて年商1兆円の大台に乗せたのが先々代の浜口友一元社長。それを07年に引き継いだ先代の山下徹前社長が海外SIerのM&Aを本格化。NTTデータのグローバル事業の実質的なスタートはこの頃からだ。

 12年に社長のバトンを受け取った岩本敏男現社長が“グローバル第2ステージ”を標榜。国内と海外の売上比率をほぼ半々までもっていくことをイメージしてM&Aを継続した。直近では米デルのITサービス事業部門を譲り受けて、北米での売り上げが一気に4720億円(18年3月の日本会計基準での実績)へと拡大。NTTデータが早くからM&Aをテコに事業を伸ばしていた欧州と並ぶまで伸ばし、年商を2兆円の大台に乗せている。

 岩本社長は、「世界の主要国でトップ集団に確実に食い込んでいくには、年商を2兆5000億~3兆円くらいまで伸ばしていかなければならない」とみており、本間次期社長も拡大路線を指向していくものとみられる。19年以降のフェーズを“グローバル第3ステージ”として、おおむね25年にグローバルでトップ5へと、より確実に入っていくことをイメージしている。

 
 

本間洋次期社長はこんな人
「凡事徹底」、一つひとつをていねいに


 岩本敏男社長が、次期社長に本間洋副社長を選んだ大きな理由は、「言ったことは必ず実行する実行力」という。二人は過去に何度か同じプロジェクトで仕事をした経験がある。そのとき、「苦しいプロジェクトがあったが、本間さんは口数こそ少ないものの、やり通す力をみせてくれた」。雄弁な岩本社長とは対照的に、本間次期社長は口数こそ少ないものの、「やり通す力」にNTTデータのこれからの成長を託すことにした。

 今年設立30年を迎えるNTTデータは、実に設立以来、29期連続の増収を達成。十分な利益と競争力を保ちつつ、増収基調を途切れさせることのないよう経営の舵取りをするのは、並大抵のことではない。

 本間次期社長の座右の銘は「凡事徹底」。一つひとつていねいに取り組んでいく、その「積み重ね」の先に、グローバル第3ステージで掲げる世界SIerトップ集団入りがみえてくる。