【米ラスベガス発】米オラクル(ラリー・エリソン会長兼CTO)は4月23日から26日までの4日間にわたって、米ラスベガスでネットスイート事業の年次イベント「SuiteWorld 2018」を開催した。ネットスイートが従来のストロングポイントを失わずに、オラクルの後ろ盾を得て成長を加速させているというメッセージを発信した一方で、まったく異なる企業文化をもつベンダー同士の統合が一筋縄ではいかないことをうかがわせる場面も垣間見られた。(本多和幸)

 2016年11月、米オラクルは約1兆円でクラウドERPのパイオニア的存在であるネットスイートを買収した。しかし、ネットスイートのビジネスはオラクルの従来のERPポートフォリオに組み入れられることなく、現在も独立した事業部門としてビジネスを継続している。

 過去、オラクルは敵対的買収でERPベンダーを吸収してきた歴史もあるが、もともとネットスイートの創業者であるエバン・ゴールドバーグ氏はオラクル出身で、エリソン会長兼CTOからアドバイスと出資を受けて同社を設立しており、近年も両者は良好な関係を継続してきた。オラクル傘下に入った後も、ゴールドバーグ氏、さらにはネットスイートで20年近いキャリアをもつジム・マッギーバー氏がネットスイート事業担当のエグゼクティブ・バイスプレジデント(EVP)としてビジネスのかじ取りにあたっている。

 ネットスイートは1998年の創業時から、ウェブ上でERP、Eコマース、CRMなどを一元的なデータ管理のもとスイート製品として提供するというコンセプトで製品開発・販売を行ってきた。基幹システムのクラウド化の流れが出てきたのはごく最近のことであり、ながらくネットスイート製品は革新的な製品としてシリコンバレーのスタートアップや成長企業に支持されてきたという背景がある。オラクルからスピンアウトして誕生したとはいえ、大企業を中心に顧客基盤を築いてきたオラクルとはまったく違う企業文化をもっているといえよう。

 基調講演に登壇したマッギーバーEVPは、「オラクルによる買収が公になってから、ネットスイートがどうなるのか多くの人に心配されたが、組織も独立していて、哲学やビジョンは何も変わっていない」とコメント。別日の基調講演に登壇したゴールドバーグEVPも、オラクル傘下となったことで営業・デリバリのリソースがグローバルで増強され成長につながっていることや、R&D投資が増えたこと、両者の技術面での連携も成果を生みつつあることを説明し、シナジーの大きさをあらためて強調した。

 また、マッギーバーEVPの基調講演にはオラクルのマーク・ハードCEOもサンフランシスコのオラクル本社から中継で参加し、「オラクルの投資が実りネットスイートが成長していることを大いに喜んでいる」とした。

 ただし、一般の従業員は両者の統合に対して異なる印象をもっていることも垣間見えた。ハードCEOは、基調講演会場からの質問に答える時間を設けたが、ネットスイートの独立企業時代からの従業員からは「ネットスイートのビジネス上の独立は保たれるのか」「オラクルはネットスイートからクラウドビジネスを学んで変革をしていくつもりがあるのか」といった問いも。現場レベルでは、“オラクル化”していくことへの抵抗感が根強いことが感じられた。さらに、日本メディアのインタビューに応じたマッギーバーEVPも、「ラリー(エリソン会長兼CTO)やマーク(ハードCEO)などの経営層はネットスイートの独立性を尊重してくれているが、もう少し現場に近いマネジメント層は必ずしもそうではない」と話している。両者が真のシナジーを発揮できるまでには、多少の時間がかかりそうだ。