関電システムソリューションズ(KS-SOL)は、パシフィックビジネスコンサルティング(PBC)の買収を機に、海外での統合基幹業務システム(ERP)ビジネスに本格参入する。PBCはマイクロソフトのERP「Dynamics」シリーズに強い。連結経営をしている企業グループを主なターゲットとして、親会社に「S/4HANA」などSAPの大企業向けERPを納入し、その海外子会社には割安なDynamics NAVを展開していくことをイメージしている。KS-SOLは、かねてからSAPを取り扱っており、関西地区を中心に多数のユーザーをもつ。KS-SOLでは、「SAP」と「Dynamics NAV」の組み合わによって、ERPのモダナイゼーション(現代化)ニーズをつかむ。(安藤章司)

関電システムソリューションズの下村 匡常務(右)と山野 茂アシスタントマネジャー

海外ITサポートのノウハウを吸収


 KS-SOLは、親会社の関西電力や関電グループ向けのビジネスが売り上げの8割程度を占めているSIerである。ビジネスを伸ばすには、一般顧客向けのビジネスを拡大させることが欠かせず、今回のERP事業の強化もその一環となった。

 同社は、SAP「S/4HANA」やインフォア「Infor M3」などを主力のERP製品として取り扱ってきたが、今年4月に日本マイクロソフトの中堅・中小企業向けERP「Dynamics NAV」の扱いに強いパシフィックビジネスコンサルティング(PBC)を買収。新たにグループに迎え入れたことで、連結経営をしている企業グループの子会社や海外法人を主なターゲットとしてDynamics NAVの拡販に乗り出していく。

 KS-SOLは関西地方では有力SIerだが、海外でのITサポートの経験はそれほど豊富ではない課題を抱えていた。この点、PBCはアジア太平洋地域を中心に世界30か国・地域余りの現地法人へのDynamicsシリーズの納入実績をもつなど「海外法人へのERP展開のノウハウが豊富」(KS-SOLの下村匡常務取締役ソリューション事業本部長)だ。

 PBCのDynamicsシリーズの納入実績は国内外300事業所余りに達し、日系企業の多くが進出する上海、香港、タイ・バンコクなどに自社拠点を開設。北米や欧州に進出する日系企業の子会社への納入実績も多数有しており、国内外の顧客企業のグループ全体のERP刷新ニーズをつかんでいく体制が、「PBCのグループ入りによって整った」(KS-SOLの山野茂・経営企画グループアシスタントマネジャー)ことになる。
 

ERPと自社DC Azureを組み合わせて運用


 一方、PBCの側もKS-SOL傘下に入ることで、「ビジネスの幅を広げられる」(PBCの吉島良平取締役戦略事業推進室長)とみている。同社のDynamicsシリーズのコンサルタントは100人規模と決して多くはない。こうした事情もあって、これまではDynamicsのビジネスにほぼ特化してきた。

 だが、実際のところ、Dynamicsはマイクロソフトの事業ポートフォリオのなかの一部分に過ぎない。パブリッククラウドのAzureやOffice 365、Windowsといった数多くのサービスや製品をもち、これらは、「IoTやAIの切り口で相互に連携していく」(同)とみている。Dynamicsシリーズだけに特化していては、いずれ限界がくる。そこで、体力のあるKS-SOLの傘下に入ることで、将来的にマイクロソフトのさまざまな製品を組み合わせた幅広いビジネスが手がけられるようになることを目指す。

 具体的には、KS-SOLの運営する自社データセンター(DC)とAzureを組み合わせて、より拡張性と柔軟性にすぐれたERPのIT基盤サービスを提供することなどがあげられる。KS-SOLは、関西地区に3か所の自社DCをもつ。この自社DCとAzureを組み合わせたハイブリッドクラウドのマネージドサービス「CIERTO(シエルト)」を手がけており、これにPBCのDynamicsシリーズのノウハウを融合させる。例えば顧客企業の本社ERPはKS-SOLのDCで運用し、国内外の子会社はAzure上でDynamicsシリーズを運用することも可能になり、提案の幅も一段と広がる。
 

外販ビジネスを2割から5割へ高める


パシフィックビジネスコンサルティングの
吉島良平取締役
 PBCの吉島取締役が予測するように、IoTやAIへの対応でERP市場は今後活気づくとみられている。マイクロソフトもDynamicsを含むあらゆる製品やサービスで、こうした市場のニーズに対応した機能を強化していく見込みだ。

 KS-SOLが取り扱ってきたSAPのERPも、2025年までに既存製品からS/ 4HANAへのマイグレーションが進む見通し。S/ 4HANAは、SAPがデジタルトランスフォーメーションのための共通基盤と位置づける「HANA」ベースの最新ERP製品だ。これにDynamicsを組み合わせることで、デジタルトランスフォーメーションの核としての機能を備えた基幹業務システムのニーズへの対応力も一段と高まる。

 今年度からPBCを連結子会社に加えたことで、KS-SOLの関西電力や関電グループ向け以外の一般顧客向けのビジネス、いわゆる「外販ビジネス」は、単純合算ベースで3割程度まで高まる見込み。PBCとのERP関連ビジネスの相乗効果を踏まえて、KS-SOLグループのERP関連ビジネスは、「向こう3年で3倍程度に拡大」(KS-SOLの下村常務)させる目標を掲げる。外販ビジネスを積極的に伸ばしていくことで、25年には外販ビジネスの比率を売上全体の5割程度まで高めていく考えだ。

なぜ有名ERPを海外ビジネスの軸に据えるのか


 SIerが海外進出する際、特定のERPを軸に据えるケースはほかにもある。NTTデータは海外事業を立ち上げるにあたり、SAPを得意とする海外SIerを重点的に買収。日立ソリューションズはDynamicsを海外ビジネスの基軸商材と位置づける。この背景には、SIer自身の知名度が海外でなかったとしても、有名ERPならば誰でも知っているので受注しやすい。また、当該ERPのスキルをもった技術者、協力会社も現地で集めやすい利点があげられる。KS-SOLもこうしたメリットに着目している。