SAPジャパン(福田譲社長)は、中堅・中小企業向けの品揃えを一段と拡充する。この8月から企業間オンライン・マーケット/購買管理の「Ariba(アリバ)」の中堅・中小企業バージョンを投入。人事給与の「SuccessFactors(サクセスファクターズ)」も人事・評価に特化したバージョンを最短1か月で稼働させるプログラムをスタートさせた。主力のERP(統合基幹業務システム)製品に加えて、購買や人事などの周辺領域でも中堅・中小企業向けに売りやすい製品やサービスの組み替えを急ピッチで進めている。(安藤章司)

左からSAPアジアの渋谷隆行・バイスプレジデント、
SAPジャパンの牛田勉・常務執行役員、
SAPジャパンの稲垣利明・バイスプレジデント

中堅・中小向けビジネスが前年度比1.5倍で推移

 SAPジャパンは、2016年に中堅・中小企業向けの体制を刷新。これまでライバル他社に押され気味だった領域をテコ入れした。その結果、昨年度(17年12月期)では同領域の売り上げを倍増させ、今年度は前年度比で1.5倍に伸ばす勢いで推移しているという。「従業員数で100人ほどの小規模なユーザー企業にも、販売パートナーとともに精力的に営業を行ってきた成果」(SAPジャパンの牛田勉・常務執行役員ゼネラルビジネス統括本部統括本部長)だと胸を張る。

 製品別では、中堅・中小企業向けのERPとして「Business ByDesign」「Business One」「S/4HANA Cloud」の主要3製品を軸に販売体制を強化するとともに、ERPの周辺製品も見直しを進めている。この8月には、企業間オンライン・マーケットプレイス/購買管理の「Ariba」の中堅・中小企業バージョン「SNAP」の販売をスタート。カタログ購買から契約管理、発注、支払管理、電子帳簿保存といった一連の購買業務を一通りカバーする一方で、基本的な機能に絞り込むことで3か月で本稼働できるようにした。価格も抑えてある。
 

「Ariba SNAP」は最短3か月で本稼働

 中堅・中小企業向けのAriba事業を担当するSAPアジアの渋谷隆行・バイスプレジデントは、「SNAPはAribaの早期導入を実現するためのパッケージで、ユーザーの事業規模が拡大し、より高度な購入業務の管理が必要になったときは、いつでも機能拡張できるように設計してある」と話す。

 ERPが主に社内の基幹業務を効率化するためのツールであるのに対して、Aribaは社外とのやりとりを効率化する。社内はある程度デジタル化が進んでいるが、「社外との取引はFAXをはじめアナログ部分が多く残っている」(渋谷バイスプレジデント)と指摘。人手不足の課題を抱えることが多い中堅・中小企業にとって、効率化、自動化の潜在的なニーズは大きいと見込んでいる。
 

 Aribaは、企業間のオンライン・マーケットプレイスも提供しており、全世界で約340万社が参加している。うち国内は約2万社が加わっているに過ぎない。国内経済の規模やサプライチェーンの大きさを考えると、10万社以上の市場はあるといわれ、「今後の伸び代が大きい領域のひとつ」(渋谷バイスプレジデント)とみている。
 

人事は最短1か月、人材の多様化に対応

 もう一つ、強化するのは人事給与の「SuccessFactors」だ。年内受注分までの期間限定で、人事管理と目標・評価管理の二つのパッケージについて、最短1か月、1ユーザーあたり月額430円から利用できるようにする。

 女性活躍推進や外国人労働者の受け入れ拡大といった国の方針も相まって、企業では人材の多様化が一層進む見通しだ。人材獲得を有利に進めたり、働く人のモチベーションを高めたり、離職率を抑制するには、「曖昧な目標や評価では、通用しなくなる」(SAPジャパンの稲垣利明・バイスプレジデント人事・人財ソリューション事業本部長)とみる。こうした流れのなかでSuccessFactorsの販売促進を強化することで、中堅・中小企業向けのビジネスをより伸ばせると判断した。

 また、パートナーとの協業も深めていく。この夏からはパートナーとの共同営業・デジタルマーケティング活動を強化している。先述のSuccessFactorsを最短1か月で本稼働するプログラムでは、アビームコンサルティングとDTS、オデッセイのパートナー3社が、SAPジャパンとの連携によって特別な納入プログラムを開発している。

 中堅・中小企業向けビジネスに弾みがつく背景には、初期導入コストや納期を短くできるクラウドやSaaS方式の商材が充実してきたこともある。今年度の中堅・中小企業向けビジネスは1.5倍に伸びる見通しだが、「クラウドやSaaS商材に限っては倍増する」(牛田常務)としている。

 しかし、オンプレミス型の個別SIに比べて、パートナーの稼げる領域が限られる課題もある。その分、中堅・中小企業向けでは、システムの本稼働までの期間をできる限り短くし案件の数を多くこなすことで、パートナービジネスを一段と活性化させていく。