AIの真の民主化が実現するきっかけになるか――。システムインテグレータ(梅田弘之社長)がAI市場の実ビジネス開拓をけん引すべく、ディープラーニングを使った異常検知システム「AISIA Anomaly Detection(AISIA AD)」の開発・拡販体制を強化している。昨年12月には社内にAIソリューション部も設立し、ERP事業などと並ぶ同社の柱に育てていきたい意向だ。

梅田弘之
社長

 システムインテグレータがAISIA ADを発売したのは昨年10月後半。同じタイミングでAI・業務自動化の展示会に製品を出展したところ、3日間の開催期間で6500枚の名刺が集まったという。梅田社長は「予想をはるかに超える反響で、来場者からは具体的なビジネスのお話をたくさんいただいた」と話す。その後も複数の展示会に出展し、やはり同様の反響を得たため、専門部署を設立してビジネス拡大の基盤を整えようと考えた。

 製造業の現場では、品質検査をさまざまなセンサーデータに基づいて行うのが一般的だが、こうした方法で検査できる範囲はサイズや温度、圧力などの狭い範囲に限られ、人間が目視で検査しているラインも多数ある。しかし、ディープラーニングの登場により、AIが画像を認識して製品の異常検知を行うことが現実になりつつあり、製造業における生産性向上の大きな要因になり得るという期待がある。それでも、課題は大きいと梅田社長は指摘する。「現状ではAIのモデルを案件ごとに一から作成しているため、膨大なコストと時間がかかり、結果として本番導入に至らないケースも珍しくない」のだ。

 AISIA ADは、まさにそうした課題に対する回答だ。「オブジェクト検知、正常・異常判定、異常表示・監視、学習処理、クラウド連携など異常検知に必要な機能をオールインワンで備えており、AIに不慣れだったり知識がまだそれほどないユーザーやベンダーでも簡単に使えて、短期導入が可能だ。AI市場の裾野を広げるポテンシャルを持っていると自負している」(梅田社長)という。

 学習プロセスは「Microsoft Azure Learning Service」を使い、学習済みの分類器を「Azure IoT Hub/Edge」でエッジコンピューターにデプロイ。エッジ側で製造ライン上の製品をカメラで撮影し、動画中の製品を自動検知した上で、分類器で正常か異常かを判定する。異常検知の状況はリアルタイムにモニタリング可能で、異常箇所にヒートマップを付けることもできる。また学習モデルは、「正常データのみ学習するモデル」と「正常異常の両方を学習するモデル」を備え、さまざまな学習データの整備状況に対応できるという。

 梅田社長は、「ユーザーのビジネスを知っているわれわれだからこそ、現場で本当に何が必要なのか、どうするとAI活用がうまく行くのかが分かる。これはAIのスタートアップなどと比べると大きなアドバンテージ。PoCをERPでいう要件定義のようなものと捉えて、しっかりユーザーにとっての大きな価値につなげていく」と力を込める。まさに、ビジネスアプリケーションの世界で培ったユーザーの業務の知識を生かした“地に足の着いた”ワンストップのAIソリューションで、AI市場そのものの拡大に貢献し、有力ベンダーの座をうかがう。近い将来、ERPビジネスで培ったパートナービジネスのノウハウを生かし、ビジネスをスケールさせていくことも考えているという。直近の目標としては、「3年で8億円の売上高」を目指す。(本多和幸)