NTT東日本は、EDI(電子データ交換)の一部が2024年に使えなくなることを周知する活動を本格化させる。この2月から年度末にかけてISDN回線を利用している事業所にサービス終了を告知する冊子を郵送。専用のホームページを今年度末までに開設し、移行支援サービスを手掛けるSIerへのリンクを張るなどの措置を講じる。また、ISDN回線から光回線「フレッツ光」に切り替えるときの初期工事費を無料にするキャンペーンを今年5月末まで4カ月間延長する。移行支援に従事するSIerなどから「サービスが終了するNTTからの周知活動が十分でない」との指摘を受け、NTT東日本はNTT西日本と連携しつつ、本格活動に重い腰を上げる格好となった。(安藤章司)
専用HPで移行支援するSIerへリンク
NTT東西地域会社は、ホームページなどでISDN回線サービスの終了を告知してきたが、「一般ユーザーからは分かりにくく、EDIに支障が出ることが十分に周知されていない」との指摘を受け、19年3月期までにEDI移行支援に関する周知体制を確立する。併せて、ISDN回線からフレッツ光に更新するときの初期工事費の無料キャンペーンを、5月末で延長することも決めた。
EDI問題は、NTT東西地域会社が24年1月からISDNを含む電話回線を順次IP網に移行するのが発端。いわば「NTT都合」による問題だとの指摘から、EDIで従来型回線を使うユーザーに向けて、NTT東西地域会社がより主体的に周知活動を展開する。
NTT東日本は2月から3月末にかけて、ISDN回線利用事業所宛に小冊子を郵送。まずは、ISDN回線のターミナルアダプターのデジタルポートにPCなどが接続されていないかどうかをユーザーに確認してもらい、接続されているようであればSIerに相談するよう促す。今年度末までに開設予定の専用のホームページでもISDNサービス終了の告知を分かりやすく伝えるとともに、EDI移行支援を手掛けるSIerからの要望があれば、当該SIerのページにリンクを張ることも予定している。
アナログ回線を使っている電話機やFAX(G3規格)は継続して利用できるが、アナログ回線でEDIなどのデータ通信を行っている場合は、「遅延が発生して現行のサービス水準は維持できなくなる見込み」(NTT東日本の山内健雅・ビジネス開発本部第一部門ネットワークサービス担当担当課長)で、継続使用は推奨できないとしている。遅延は、従来型のデータをIP網に適したパケットで包む工程が新たに加わるために発生する。FAX程度なら遅延はさほど問題にならないが、接続先と何度もデータをやり取りするEDIでは1.4~2倍程度、通信時間が延びることが想定されている。
人手不足は必至、時間との勝負に
このためISDNやアナログ回線を使っているEDI端末は、基本的にインターネット回線をベースとしたEDIに移行する必要があるが、一部業界ではインターネットEDIの規格が固まっていない課題もある。毎日大量・多品種の商品を受発注する流通・小売業で使われている通信手順「流通ビジネスメッセージ標準」などは早々にインターネットに対応したが、受発注量がそれほど多くない業界では動きが鈍くなりがちだという。今回のNTT東日本の周知活動は、通信手順を決める各業界団体の背中を押す効果も期待されている。
ほかにも、ISDNサービス終了間際の駆け込み移行や、消費税の軽減税率に関連して23年10月からスタートする「インボイス制度」などの新制度への対応。これに新しいEDIと接続する基幹業務システム側の手直しが加わることで、24年に近づくほど移行にかかるSIerの人手不足が、より深刻になる可能性がある。NTT東西地域会社の周知活動が本格化した今のタイミングで、EDI移行に一段と弾みをつける必要がありそうだ。