シスコシステムズ(デイヴ・ウェスト社長)は、SMB向けブランド「Cisco Start」に、個人店舗やSOHOを対象とした新たなWi-Fiアクセスポイント「Meraki Go」を追加した。設置・運用に専門の知識を必要としないことにフォーカスを当てた同製品は、ネット販売により、ユーザーへの直接的なアプローチを強める。エンタープライズネットワーク最大手による新たな試みは実を結ぶか。(銭 君毅)
SOHO・個人店舗のユーザーを開拓
セキュリティー対策が
あらゆる層に浸透してきた
シスコシステムズがCisco Startを立ち上げ、本格的な新規顧客の開拓に取り組み始めたのは2015年9月から。以来、同ブランドの売り上げは順調に拡大しているという。エンタープライズ市場が主戦場であると位置付けつつも、すでにスモールビジネス市場はシスコシステムズにとって無視できないマーケットとなっている。
同社は4月11日、スモールビジネス市場でのセールスを強化するべく「SMB・デジタル事業」を新たに創設したと発表。同社で長くマーケティングを担当してきた鎌田道子執行役員が統括する。
Meraki Goシリーズの屋内型(左)と屋外型。デザインにもこだわっており、置き場所を選ばない
Cisco Startの提供を開始して以来、このセグメントを見てきた鎌田執行役員は「ユーザーのニーズが変化している」と分析する。「比較的大規模な事業者が取り組んできたセキュリティー対策が、中小企業から個人レベルまで浸透してきた」ことから、小規模事業者において、コンシューマー用アクセスポイントから、セキュリティー対策が強化された業務用アクセスポイントへのアップグレードを検討するケースが増えているという。ただ、Cisco Start製品の多くは環境構築の作業を前提とするものだった。ネットワークの構築・運用を外注する予算を確保できない小規模事業者に対しては、提案できる製品がほとんどなかった。
パートナーを通さずに
インターネットで販売
同社が今回、Cisco Startブランドに追加するのは25人以下の小規模事業者向けアクセスポイント「Meraki Go」シリーズ。屋内型が2万円台、屋外型が3万円台とコンシューマー製品から乗り換えやすい価格帯を予定している。クラウド管理型のアクセスポイントにより、スマートフォンアプリで設定・管理でき、短時間でネットワーク環境を構築できる。また、ゲストWi-Fiのセットアップやアクセス先制限も可能で、こちらもスマートフォンアプリから設定できる。
鎌田道子
執行役員
鎌田執行役員は「従来製品の廉価版ではない。シスコシステムズの技術を結集しつつ、マーケットに特化した製品として新たに開発した」と意気込む。小売り、飲食店、個人事業主を主なターゲットとして積極的に展開していく。
Meraki Goシリーズは、「専門の知識がなくても設置・運用できる」という特性から、主にネット販売を活用して拡販を進める。まずはAmazon.co.jpのECサイトから提供する方針だ。従来のCisco Start製品とは違い、パートナーを介さず、サポートもシスコシステムズが独自で行う。ただし、この販売チャネルはあくまでも現段階での方針であり、今後のユーザーニーズによっては量販店や従来のパートナー網を活用するなど、柔軟に対応していくという。また、Cisco Startブランドの従来機種については「パートナーがサポートを提供することを前提とした製品なので、Meraki Goと同じ形態での販売モデルはとらない」としている。
今後は、「シスコシステムズにも小規模事業者向け製品がある」との認知拡大に向けて、プロモーションを強化する。
エンタープライズ分野に強いベンダーは、製品単価の違いから、スモールビジネス市場では苦戦を強いられることが多い。ましてや、直接販売というビジネスモデルに対し、シスコシステムズがどう適応していくのか。市場ニーズに応えての参入とはいえ、認知度の向上にとどまらない製品戦略が求められる。