アステリア(平野洋一郎社長)は5月16日、台湾のAI画像認識ソリューションベンダーGorilla Technology(Dr.スピンサー・コー CEO)との業務提携を発表した。昨年アステリアは、IoT導入のハードルを下げるエッジソリューション「Gravio」を提供しており、今回の提携でサービスをより洗練させたうえ、グローバルへのチャネルも手に入れることになる。エッジコンピューティングという市場の広がりを機に、グローバル企業へと成長するための布石を着実に打っていく。(銭 君毅)
Gorilla TechnologyのDr.スピンサー・コー CEO(左)とアステリアの平野洋一郎社長
台湾の画像認識ベンダーと戦略的提携
自前主義にこだわらず
本当にいい物を組み合わせる
アステリアは現在、2020年度を見据えた中期経営計画の最中にある。そこでは「売上収益50億円」を目標の一つに掲げており、その内50%を海外売上で構成する方針だ。平野社長は「ワールドワイドに展開するに当たって、われわれは自前主義にこだわらない。本当にいいものを提携や買収という形で組み合わせ提供していきたい」と語る。
今回、アステリアが発表した事業提携先であるGorillaは、台湾に本社を置くAIソリューションベンダー。9カ国に拠点を構え、エッジAIの開発に注力してきた。インテルのコンピュータービジョン分野におけるパートナー制度「Open VINO」に加わっており、画像解析に強みを持つ。同社が提供するビデオIoTプラットフォーム「IVAR」は、動画の管理と分析機能を一元的に提供するシステムで、クラウドとエッジ両方の解析処理に対応する。コーCEOは「エッジに近い低処理能力の小型CPUであってもAI処理が可能になる」と語る。すでに台湾の刑事警察局や桃園国際空港などで活用
されており、公共系などでの大規模展開の実績もある。
一方のアステリアは、18年10月からGravioを提供し、これまで3桁を超える申し込みがあったという。Gravioは月額500円からという低価格でノンプログラミングによる手軽なシステム構築が可能で、ITの知識が乏しい一般企業や店舗、学校などをターゲットとしている。平野社長は「IoTは工場などの特定の領域でしか使われていない。IoTやAIのメリットを幅広いユーザーに届けていきたい」とその意図を語る。Gravioにおける画像認識などの推論モデルは、外部からのプラグインが可能になっており、IVARの画像認識技術と連携することで活用シーンの拡大を見込む。
テクノロジー面の協業だけでなく
グローバルの販路を確保
アステリアが重要視しているテクノロジーの一つが、AIの画像認識技術だ。今年4月には専門の研究開発会社「Asteria ART」を設立するなど投資を積極化。その背景には、Gravioの根幹をなす「ソフトウェアセンサー」という概念がある。これはAIを用いた画像処理技術により、これまでさまざまなハードウェアが必要だったセンシングを、ソフトウェアで可能にするもの。平野社長は「カメラで人混みを撮影すれば、人数や性別を判別できるし、空を撮れば天候を判別することができる。人感、温度、湿度センサーのようなハードウェアと同じことがAIによって可能になっている」と強調する。これまでも、カメラを使った人数センシング技術などは実現していたものの、Gorillaとの連携でより正確かつ柔軟な運用が可能になる。
今後アステリアは、GravioとIVARを組み合わせたソリューションを同社のパートナー企業などを通して全国に拡販していく。現在、Gravioはアステリアからの直販が中心となっているが、IVARによるGravioのターゲット拡大に伴って、新たな販路や料金体系を用意する可能性もあるという。またGravioとIVARは、Gorillaを通じてグローバルにも展開する方針で、まずは台湾、米国、オーストラリアなどが対象市場となる。
今回の事業提携でアステリアは、技術的な協業体制だけでなく、グローバルの具体的な販売チャネルを得たことになる。グローバル企業として成長を遂げるための土台ができつつある。