UiPath(長谷川康一代表取締役CEO)がRPA×AI(RPAI)の連携を加速させている。人が行っていた単純作業をソフトウェアロボットで自動化できるRPA。爆発的な市場の盛り上がりから数年が経過した今、導入済みのユーザーの中ではスケールアップのニーズが高まっており、RPAツール単体ではなく連携する関連サービスに市場の注目は移行し始めている。“第2ラウンド”へと突入するRPA市場で、同社はマーケットプレイスやパートナープログラムを整備し、AIを含めたさまざまなサービスと連携することでユーザーの期待に応える構えだ。(銭 君毅)
関連サービスとの連携環境を整えAIと融合へ
高密度なパートナー支援体制
「これまでRPAでは自動化できなかったことも、AIと組み合わせることで可能になる。しかし、そのためにはAIのノウハウを持たない人でもAIを活用できる枠組みが必要になる」と長谷川CEOは強調する。近年同社は、RPAとAIの融合を目指しており、そのコアになるサービスとして「AI Fabric」を発表した。
長谷川康一
CEO
このAI FabricはRPAが自動化する業務フロー上に適用できるAI機能を開発・運用・管理するためのサービス。AI Fabricで開発したAI機能は、すでにRPAを導入している業務フローにドラッグアンドドロップで組み込めるようにするという。AI機能を自ら開発するノウハウを持たないユーザーに対しては、自動化のためのさまざまな部品(コンポーネント)をラインアップするマーケットプレイス「UiPath Go!」から構築済みのAIソフトウェアを提供していく考えだ。
UiPath Go!は、2018年の秋より英語版で提供されており、7月30日に日本語に対応した。英語以外の言語での提供は日本が初めてで、日本市場への期待の高さがうかがえる。すでに約50個のコンポーネントが日本語で提供されており、その内11個のコンポーネントがAIに関連するものだという。英語版で提供されているものを含めると600個のアダプター、ソフトウェア、スキルなどがあり、同社のパートナーによって構築されている。ユーザーは、UiPathが品質とセキュリティを保証したこれらの拡張機能をそのまま導入することができる。
また、同社は7月29日、新たにテクノロジーパートナープログラムを国内で開始した。同プログラムはRPAプラットフォームの付加価値創出を目的としたもので、無料の開発用ライセンスやトレーニング、ソリューション開発などのための環境をパートナーに提供する。これにより生まれた新たな連携ソリューションはUiPath Go!にラインアップし、拡販を支援していく。
テクノロジーパートナーには、日本IBM、グーグル・クラウド・ジャパン、ABEJA、BEDOREなど大手から新興企業まで約30社が加わっており、年内に100社以上に拡大する計画だ。その他、同プログラムの加入企業やAIサービスを展開するAIパートナー35社とともに実証実験を行い、ユースケースを創出する。長谷川CEOは「われわれのRPAIに興味を持っているユーザー100社に対し、AIパートナーとともにUiPathのRPAと実際につながって動くケースを作っていきたい」と意気込む。
連携はAIだけじゃない
同社が日本に進出したのは17年の2月。以来、社員数は約300人まで拡大し、実質2年半で約1100社に導入企業を増やした。これだけのユーザーを獲得できた要因として、上田聡・ストラテジストは「もともと当社のRPAは要素認識の性能が高く、そこが改めて評価されている」と分析する。「他社製品ではうまく認識せず業務が止まってしまうケースでも、われわれのツールで解決できたこともある」と自信を見せる。
MM総研の調査によると、国内のRPA導入率は32%。導入企業のニーズは利用の高度化や適用範囲の拡大などへと移行しているという。そうした中で、デスクトップ型からサーバー型へスムーズに移行できる拡張性やRPAのベースとなる認識性能の高さが威力を発揮している形だ。パートナーソリューション本部マーケティング部の原田英典氏は「ロボットとの付き合い方を模索する段階から、積極的に使い込む段階へと移っている。今後、RPAをうまく使えるかどうかが企業の業績に影響を及ぼすようになる」と強調する。
今回のAIにかかわる一連の発表はそうした市場ニーズに対応した施策といえるが、同社はAI以外のテクノロジーをカバーしないわけではない。原田氏は「今年の注力分野としてAI、クラウド、ユーザー開発の3点をパートナーに向けてアナウンスしているが、RPAのユースケースは千差万別。さまざまなベンダーと組んでいきたい」と語る。また、長谷川CEOは「もちろんAIには注力していくが、われわれは会計システムやCRM、ワークフローなどさまざまなシステムと連携していくことが重要だと考えている。テクノロジーパートナーとともにユーザーのニーズに応えていきたい」としている。