ITシステムの保守運用を強みとする日立システムズエンジニアリングサービス(日立システムズES、矢田隆宏社長)は、2025年に向けて既存ERPからの置き換えが進むと見られる「SAP S/4HANA」の認定技術者を、今後2年でおよそ80人体制に拡充する。日立システムズグループのユーザー企業でもS/4HANAへの移行が見込まれる中、保守運用を主に担当する日立システムズESでは、関連技術の習得や新しいERPに合った保守運用体制の見直しを進めていく。

 今年4月1日付で日立システムズの専務執行役員から日立システムズESのトップに就任した矢田隆宏社長は、「S/4HANAに合わせて保守運用や改修作業も変えていく必要がある」と指摘する。S/4HANAはサブシステムや関連モジュールを組み合わせる機能が強化されており、従来のERP本体をカスタマイズしていく方式とは異なる。保守運用のや改修作業の見直しを進めることで、S/4HANAのスムーズな運用体制の整備を急ぐ方針だ。
 
矢田隆宏
社長

 日立システムズESでは、今年度から自社で使うERPとしてS/4HANAを稼働させており、実際にS/4HANAの保守運用を社内で行うことでノウハウを蓄積している。

 同時に、ベテラン保守要員のノウハウに依存する属人性が高かった部分を標準化したり、日立製作所の統合システム運用管理「JP1」をはじめとする各種運用ツールを一段と活用していく。日立システムズESでは、保守運用の現場で残っていた属人的、アナログ的な部分をデジタル技術によって標準化、近代化を行うことを「現場のデジタライゼーション」と位置付け、S/4HANAの保守運用体制の整備と並行して進める。S/4HANAへの対応や保守運用の「現場のデジタライゼーション」については、前任の帆足明典社長(現特別顧問)時代から進めており、流れを加速させるためにアクセルをさらに踏み込んでいく。

 日立システムズESの直近の売上構成比は、親会社の日立システムズ向けが約65%、日立製作所グループ向けが約25%、一般企業向けが約10%。日立システムズを含む日立グループの顧客が大半を占めることもあり、エンドユーザーの事業規模は比較的大きい。SAPクラスの大規模ERPを導入しているケースも少なくなく、「保守運用のデジタライゼーションや自動化を行う効果は、小規模な事業所に比べて大きい」(矢田社長)と見ている。

 また、矢田社長は保守運用を「ITライフサイクルのラストワンマイル」と位置付けている。システムの信頼性の担保や安定稼働のみならず、次の改善につなげる重要なパート。折からの人手不足で割り当てられる人員数に限りがある中、省力化や自動化によって顧客が求める品質の「ラストワンマイル」を今後も堅持していくことで信頼を勝ち取り、ビジネスを伸ばしていく。(安藤章司)