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CES 2020 日本企業が存在感を取りもどす契機になったか? BtoB領域でのエコシステム構築に注力

2020/01/24 09:00

週刊BCN 2020年01月20日vol.1809掲載

【ラスベガス発】世界最大の家電IT見本市「CES 2020」が、米ラスベガスで開催された。大手企業からスタートアップ企業まで、世界各国の企業が出展。AIや5G、ロボティクスなどの最新技術を活用した製品、サービスなどが相次いで展示される一方、ここ数年、存在感が薄かった日本の企業の発表に高い関心が集まった。そして、あらゆる業界において、いまやデジタルテクノロジーがより重要な役割を担うことを示す展示会になったといえよう。(大河原克行)

相次いだ日本の大手企業による
新たな協業提案

 CES 2020は全世界から17万人以上が訪れる世界最大の家電IT見本市だ。以前はテレビを中心としたコンシューマー製品が主役だったが、ここ数年はBtoBの領域の展示が増加。出展各社が展示したAIや5G、ロボティクスといった最新技術を活用した製品、サービス、テクノロジーを通じて、協業を模索する場へと移行してきた。
 
パナソニックブースを訪問し、同社の津賀一宏社長(右)と懇談する
ソニーの吉田憲一郎社長兼CEO

 パナソニックの津賀一宏社長は、「パナソニックはプラズマテレビから撤退したのにあわせて、CESを家電見本市としてではなく、当社が持つテクノロジーを通じてBtoBでどう貢献できるのかといった、パナソニックのポテンシャルを示す場に変えてきた。そうした取り組みでは協業が不可欠であり、今回のパナソニックの展示も、かなりの部分で協業を前提としたものになっている」と語る。

 それはソニーも同様だ。ソニーは、テレビの新製品などを展示する一方で、電気自動車のコンセプトカー「VISION-S」を公開して来場者を驚かせた。「ソニーがクルマを発売か」と色めき立つ来場者の姿も見られたが、同社では、「モビリティにおける安心、安全、快適さやエンタテインメントなども追求し、クルマの進化に対する貢献を目的にしている」と位置付け、「ソニーがクルマメーカーになるわけではない」と説明する。VISION-Sは、ソニーの車載向けCMOSイメージセンサーやToFセンサーなど、数種類のセンサーを33個搭載。車内外の人や物体を検知、認識して、高度な運転支援を実現することを紹介した。クルマを切り口に、BtoBでのビジネスチャンスをうかがう展示内容になっていたと言えよう。
 
ソニーが発表したコンセプトカー「VISION-S」。
クルマを切り口にBtoBでのビジネスチャンスをうかがう

 ソニーの吉田憲一郎社長兼CEOは、「過去10年は、スマホをはじめとするモバイルが私たちの生活を根本から変えたが、次のメガトレンドはモビリティだと信じている」と述べ、モビリティにおけるソニーのポジションを示すとともに、VISION-Sを通じた協業も模索する。

  トヨタ自動車も、閉鎖予定の東富士工場の跡地に、モノやサービスがつながるコネクティッド・シティを設置することを発表。21年初頭に着工する予定を明らかにするとともに、今後、さまざまなパートナー企業や研究者と連携して取り組みを進める。豊田章男社長は、「ゼロから街を作り上げることは、街のインフラの根幹となるデジタルオペレーティングシステムも含めた将来技術の開発においてユニークな機会となる。バーチャルとリアルの世界の両方でAIなどの将来技術を実証することで、街に住む人々、建物、車などモノとサービスが情報でつながることで、ポテンシャルを最大化できる」とし、「将来の暮らしをより良くしたいと考えている方、このユニークな機会を研究に活用したい方、もっといい暮らしとMobility for Allを、トヨタと一緒に追求したい方、すべての参画を歓迎する」と述べ、新たな領域における協業に期待を寄せた。

 また、積水ハウスは、昨年のCESで発表したプラットフォームハウス構想に基づいた第1弾サービスとして、「在宅時急性疾患早期対応ネットワークHED-Net」を構築すると発表した。コニカミノルタの非接触型センサーを採用するほか、NECやNTTコムウェアと連携。20年から生活者参加型パイロットプロジェクトを開始し、社会実装を目指す。CES 2020では、日本の大手企業による新たな協業提案が相次いだ。

パナソニックやNEC PCは
北米市場再参入へ

 IT関連では、IBMが日本でも設置されることになる量子コンピューター「IBM Q System One」を展示したほか、クラリオンを傘下に収める自動車関連メーカーの仏フォルシアが提供する新たなサービスで、米マイクロソフトの自動車業界向けプラットフォーム「Microsoft Connected Vehicle Platform 」を活用するという発表もあった。シャープは、傘下のダイナブックが「8K Video Editing PC System」を投入すると発表した。シャープの石田佳久副社長は、「8K映像の編集を可能とするPCの投入により、8Kにかかわる撮影、編集、伝送、表示までの一連のバリューチェーンを実現でき、全てのピースが埋まる」とコメント。「今後は、8Kの裾野の拡大に向けた機器の普及および伝送環境の整備など、8K+5G Solutionの立ち上げに取り組む」とした。

 今回のCES 2020では、複数の日本企業の北米市場への再参入が発表されたのも大きなトピックだ。パナソニックは、主力のテレビ事業を撤退し、電子レンジなどに限定していた北米の家電事業に関して、「もう一度、家電事業をやり直す時期がやってきている」(津賀社長)とコメント。「従来型のスタンドアロンの家電ではなく、サービスに紐づけされた新たなタイプの家電でやらなくては意味がない。北米市場では、新たな領域の家電ビジネスを模索していくことになる」などと述べた。

 また、NECパーソナルコンピュータは、米国市場向けに、NECブランドのPC「LAVIE」シリーズの3機種を3月から発売すると発表。デビット・ベネット社長は、「日本でナンバーワンの国内PCメーカーとして、米国市場にチャレンジしたいと考えた」と意欲をみせている。
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