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日本オラクル SaaSこそがDXの推進役 10年かけた“つくり直し”の価値を問う
2020/11/19 16:00
週刊BCN 2020年11月23日vol.1851掲載
新型コロナ禍は多くの企業に、事業環境の急激な変化への対応力を強化しなければならないという危機感を植え付けた。こうしたマインドの変化は、ビジネスアプリケーション市場の動向にも大きく影響する。日本オラクルは11月12日、ビジネスアプリケーション事業の戦略を発表し、米オラクルが約10年かけて進めてきたERP製品の再構築とSaaS化戦略が目下のニーズにフィットしていると説明。強い追い風を感じているようだ。(本多和幸)
「デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性は新型コロナ禍により理解が広がり、ユーザー企業の取り組みも加速しているが、テクノロジーやITソリューションに対するニーズそのものは変化している」。日本オラクルの善浪広行・執行役員クラウド・アプリケーション事業統括は、市場の現在をこう分析する。
ビジネスアプリケーションでは、業務プロセスの自動化やエンドユーザー向けのガイド機能の充実といった既存業務の生産性向上を支援するのはもちろん、リモートワークなど柔軟な働き方への対応は当たり前に求められる要素だ。しかしもはやそれだけでは十分でなく、「コロナを乗り越えてもそこで終わりではないと多くのユーザー企業が感じ始めており、将来にわたる事業環境の変化にいかに対応できるかが問われている」(善浪執行役員)のだ。
このニーズに応えるには、広範な業務をカバーする機能がシームレスに連携し、かつ段階的な導入が可能で、AIなどの新しいテクノロジーが業務に生かせる形で組み込まれ、データドリブンなビジネスを支える仕組みが必要だとオラクルは見ている。さらに、「標準機能が充実していてアドオンを極小化可能な進化し続けるSaaSこそがDXを加速させられる。オラクルのクラウドERPである『Oracle Fusion Cloud ERP』(今夏にOracle ERP Cloudから名称変更)はまさにこうしたニーズに応えられるように10年以上かけて新たにつくり直した製品であり、ここにきてユーザーからの引き合いも急増している」と善浪執行役員は話す。売り上げが大きく伸びており、他社製品からの乗り換えの問い合わせも増えているという。
ただし、クラウドシフトや標準機能の充実、カスタマイズの最小化といったアプローチを取っているのは、多くのERPベンダーに共通した傾向でもある。Fusion Cloud ERPは何が違うのか。中島透・クラウド・アプリケーション事業統括事業開発本部ディレクターは「オラクルの場合、買収して手に入れた機能を既存の自社アプリケーションと単に連携させてリリースするというやり方はしない。いったんソースコードを全部バラして、全ての機能を一つのデータモデルに統一して業務横断的なデータ活用ができるようにつくり直している。だからこそ、業務をまたぐ意思決定が支援できるし、AI/MLによる自動化のメリットも最大化できる」と力を込める。
例えば最大の競合であるSAPは、調達の「Ariba」、人事管理の「SuccessFactors」、経費精算の「Concur」をM&Aによりラインアップに加えている。しかし、「システム間を連携させても、データベースがバラバラな状態でそれぞれの業務が別のアプリケーション上で実行されると、的確な分析ができず、真にデータドリブンなビジネスにはつながらないとオラクルは考えている」と中島ディレクターは強調する。
Fusion Cloud ERPのアーキテクチャーそのものが最大の差別化要因であるというメッセージは、新型コロナ禍中の市場でユーザーの支持を着実に集めている手応えがあるという。また善浪執行役員は「オラクルはピュアSaaSにこだわっている。競合他社も表向きクラウドに舵を切ると言っているが、ユーザーからは具体的な今後の方針が見えず不安だということで当社にご相談いただくケースも増えている」と話す。
日本オラクルは、SaaS型ERPの拡販にあたって「キャズムは超えた」と判断している。これまでは自社のコンサルチームが中心となってビジネスを立ち上げてきたが、今後は本格的な拡販フェーズに入る。「つくり込みを増やすようなパートナーリングはあまり意味がないと思っているが、一緒にお客様のDXを進められそうなパートナーとは協業強化に向けた準備を進めている」(善浪執行役員)としている。
新型コロナ禍は多くの企業に、事業環境の急激な変化への対応力を強化しなければならないという危機感を植え付けた。こうしたマインドの変化は、ビジネスアプリケーション市場の動向にも大きく影響する。日本オラクルは11月12日、ビジネスアプリケーション事業の戦略を発表し、米オラクルが約10年かけて進めてきたERP製品の再構築とSaaS化戦略が目下のニーズにフィットしていると説明。強い追い風を感じているようだ。(本多和幸)
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