NRIセキュアテクノロジーズ(NRIセキュア)は、旺盛な情報セキュリティ需要の取り込みに向けて、野村総合研究所(NRI)グループや同業他社、ユーザー企業内におけるセキュリティ人材の育成支援など外部連携を一段と強化していく。ここ数年は設計段階からセキュリティ機能をシステムに組み込む「DevSecOps」の需要が高まっていたことに加え、昨年度からはコロナ禍に伴うリモートワークのセキュリティ対策の案件が急増。「NRIセキュア単独では顧客の増え続けるセキュリティ需要をさばききれない」(柿木彰社長)とし、外部リソースとの連携強化を打ち出す。
柿木 彰 社長
DevSecOpsは、近年のデジタル技術を活用した事業変革DXの文脈で取り入れられることが多い。NRIセキュアでは通常のセキュリティ案件とは別に「DXセキュリティ事業」として切り出し、NRIグループのDX専門会社のNRIデジタルと密に連携する。NRIデジタルの会長CEOを務める増谷洋氏は、NRIセキュアの創業メンバーの一人であるとともに、NRI本体の専務執行役員も兼務するなどグループ連携の要を担っている。ほかにも同業他社との連携を深めたり、セキュリティ製品を開発するメーカーの支援を得ながら、既製品でカバーできる範囲は積極的に既存製品やツールを活用する。
NRIセキュアは、無理のない健全な成長の目安として売上高ベースで年率10%程度の成長を想定していたが、昨年度(21年3月期)は計画を上回る12.5%増に達した。リモートワークの定着化に伴うゼロトラストネットワーク化需要やDXセキュリティ分野の引き合いが高水準で続いていることから、「今年度も昨年度と同様の勢いで伸びている」(柿木社長)という。高止まりする需要を十分に満たせる体制づくりの一環として、ユーザー企業の社内でセキュリティ人材の育成を支援し、ユーザー自身である程度運用できる体制づくりに努める。
ほかにも大学生向けの専門的なセキュリティ講習や業界団体・コミュニティー活動、勉強会への参加によって若手の育成や人脈づくり、新しいスキルの習得などに時間を割いている。セキュリティ人材の慢性的な不足の緩和、コミュニティー活動を通じた相互扶助の形成、セキュリティ資格の取得に役立つ活動だ。NRIセキュアでは毎年1カ月分に相当する営業時間を自己研鑽の名目で各種活動に割り当てることを社員に求めている。組織を越えた横のつながりを重視する施策によって顧客の需要を満たすとともに、NRIセキュアの持続可能で健全な成長維持につなげる。(安藤章司)