ソフト開発のラキールは、人事管理パッケージソフト「LaKeel HR」の販売を本格的に始める。まずは“戦略人事”に重点を置いたモジュールを先行発売して、来年度(2022年12月)中に給与計算や勤怠管理の機能を追加することで、人事総合パッケージに仕上げる。主な提供方式はユーザー企業ごとに個別環境を用意したSaaS方式で、販売対象は従業員数1000人超をメインに据える。徹底した部品化をしていることからユーザー企業の要望にそってカスタマイズも可能だ。今回のLaKeel HRはSaaS対応の基幹業務システム製品の第一弾となる。
LaKeel HRが最も重点を置く“戦略人事”とは、人事評価を現場任せにするのではなく、営業や技術、スタッフの成績やキャリアなどの基礎的なデータに加えて、面談での発言、チームでの存在感、影響力といった数値化するのが難しい情報も取り込んで、多角的に分析することを指している。その上で、同業他社と比べて報酬は十分であるか、働く環境は適しているかなどの要素を加味して、生産性を高めたり退職予防の人事施策で先手を打つ。
とりわけ、「優れた人材群のなかの退職予備軍に対して、複数の対策を前もって設定し、退職の方向へ傾かないよう実行力ある施策になるよう支援する」と、佐藤友彦・LaKeel HRプロダクトオーナーは話す。日々の人事管理の業務はできる限り効率化し、戦略人事により多くの時間を割けるようにする。
佐藤友彦 プロダクトオーナー
ラキールは、もともとソフトウェアを部品化し、効率よくシステムを構築する技術に長けたソフト開発ベンダーで、一時期はERPベンダーのワークスアプリケーションズの子会社だったが17年に独立。今年7月に東証マザーズに株式上場を果たしている。
同社はIBMのサーバー旧AS/400向けの会計、人事、給与のパッケージを開発しているが、SaaS対応の人事管理パッケージを発売するのは今回が初めて。開発部門を管掌する川上嘉章・取締役は「来年度中には給与計算や勤怠管理の機能を追加し、総合人事給与パッケージとして完成度を一段と高める」考えを示した。
川上嘉章 取締役
同社は、ここ数年でユーザー企業個別の実行環境に対応したSaaSをベースとしたパッケージの開発に力を入れおり、SaaS対応のアプリではネット通販や企業向けSNS、ビジネスインテリジェンスなどが売れ筋となった。これまでは個別SIを中心とした「プロフェッショナルサービス」が主力だったが、近年ではパッケージ製品を中心とした「プロダクトサービス」が伸長。直近第2四半期(21年4-6月期)は両事業の売り上げ比率がほぼ半々になった。サブスクリプション契約件数も右肩上がりで伸びて225件に到達しており、今後四半期ベースで売上比率が逆転する可能性もある。
今年度(21年12月期)の全社連結売上高は前年度比9.0%増の58億円、営業利益は58.6%増の4億円を見込む。(安藤章司)