ワークマネジメントプラットフォーム「Asana」を提供する米アサナが日本市場で大企業の顧客開拓を本格化している。日本法人であるAsana Japanの田村元・代表取締役カントリーマネージャーは「中長期的な視野でDXに向けたマネジメント変革のための投資をしていこうという意識が高まっており、そうした傾向は特に大企業で顕著。Asanaをそのためのツールとして評価してくれるケースが増えている」と話す。11月18日には、大企業での全社的な導入に対応した大幅な機能向上やパートナーエコシステムの拡充も発表した。(本多和幸)
田村 元 代表取締役
Asanaのベーシックな価値は、チームの生産性を向上させるためのプロジェクト管理とタスク管理だ。チーム内の「誰が、何を、いつまでにやるか」を決めた上で進捗を可視化できるように、業務やプロジェクトに紐づけて必要なコミュニケーションツールやファイル、データなどを統合的に管理。チームメンバーやマネージャーが相互に仕事の状況を把握できる環境を提供することで、進捗報告やさまざまな調整など「いわば“仕事のための仕事”を大幅に削減できる」(田村代表取締役)としている。
同社は次の段階として、経営ビジョンから全社目標、事業目標、事業目標を実現するための各プロジェクト、プロジェクトを構成するチームのタスクまで、各階層のつながりを可視化できる機能を備えた。それぞれのタスクやプロジェクトが、事業や全社の目標達成にどうつながるのか明確にすることで、従業員やチームのモチベーション、パフォーマンス向上につなげる意図だ。
今回のアップデートでは、各階層の目標とプロジェクトやタスクの進捗を関連づけて管理する機能をさらに強化した。メジャーなCRMなどの他社製ビジネスアプリケーションをAsanaと双方向で連携できる環境を整え、企業活動や業務のデータをより網羅的にAsanaに取り込んでトラッキングできるようになったほか、それらをより分かりやすく可視化するためのダッシュボード機能もブラッシュアップした。これにより、都度リアルタイムかつより精緻にビジネスの現状を把握して各階層での意思決定に役立てることができる。「プロジェクトやタスクの進捗を踏まえて、チームの目標と全社の目標とのアライメントがやりやすくなる」と田村代表取締役は説明する。
さらに、部門間や社内外を横断し、Asanaと連携する他社製アプリケーションまでカバーしたワークフローを構築できるノーコードのワークフロービルダーも提供する。アサナは業務種別ごとにワークフロー構築のベストプラクティスを蓄積しており、それを反映したライブラリも合わせて公開する。また、拡張性やセキュリティに関する機能を強化し、米スプランクやネットスコープ、オクタなど、関連ソリューションベンダーとの連携も拡大したことを明らかにした。
これらの機能強化・拡充は、大企業での大規模導入の動きが本格化していることを受けたものだ。日本国内でも大手自動車メーカーやコンビニチェーンが既に活用しているほか、富士通の全社DXプロジェクトである「フジトラ」でも経営変革のための基盤として導入が拡大しているという。
これまでも大企業の特定の部門などで小規模に導入する事例は多く、そこでの成果がスケールする形で導入規模が拡大するケースが増えている。田村代表取締役は「日本でのビジネスの半分くらいは、お客様がセルフサービスで小規模に導入してくれていて、その中には大手企業のお客様もかなり含まれる。彼らがAsanaを使って自分たちのチームの仕事がうまくいくことを実証してくれ、より上位のマネジメント層が経営の変革ツールを導入したいという意向が合わさると、スムーズに導入が拡大していく傾向がある」と説明する。さらに、「一昔前のERPもそうだが、大抵マネジメント層が入れたいツールに現場は反感を持つ。Asanaは現場も含めて会社全体にメリットがあることを評価してもらっている」と手応えを語る。
販売パートナーも拡充しており、電算システムや日商エレクトロニクスなど10社程度がアクティブな状態。大企業の需要が高まる一方で、地方でDXに積極的に取り組むユーザー企業も開拓したい意向で、2022年は各地方の主要都市に拠点を置いて新たなパートナーの拡充にも取り組む。