JBCCホールディングス(JBグループ)はクラウド/SaaS事業の積み上げによって、来年度(2023年3月期)は売り上げ増に転じるとみている。ハードウェア製品やパッケージソフト、手組みの業務アプリ開発といった従来型の売り切り型のSIビジネスのモデルから、クラウド/SaaS、ローコード開発を主軸とするモデルへの移行を推し進めており、本年度はクラウド/SaaSに関連する新規受注分が約30億円に達する見込み。月額課金をベースとするリカーリング型の新規受注がそのまま「来年度の売り上げを押し上げる原動力になる」(東上征司社長)との見通しだ。
(安藤章司)
JBグループは、AWSやAzureといったクラウド基盤や各種のSaaSアプリケーションを積極的に販売するとともに、アプリケーション基盤のサイボウズ「kintone」やローコード開発の「GeneXus(ジェネクサス)」を活用したSIビジネスに力を入れている。本年度上期(21年4-9月)のクラウド/SaaS関連の売上高は前年同期比50.9%増と大きく伸びた。ローコード開発の売上高も同52.8%増に達し、SI事業全体に占めるローコード開発の比率は昨年度上期の25%から41%に大きく伸びている。
東上征司 社長
JBグループが主なターゲットとする中堅・中小企業ユーザーにおいても、「コロナ禍期間中に業務のデジタル化の推進やリモートワークへの対応で、クラウド移行、SaaS活用が急ピッチで進んでいる」(東上社長)。24年3月期までの3カ年の中期経営計画では、従来の売り切り型のビジネスから月額課金をベースとするリカーリング型のビジネスの拡大や、ローコード開発による開発期間の短縮、開発費の圧縮を重点領域に挙げている。
月額課金化による売り上げの平準化、ローコード開発のよる開発費の圧縮はそのままJBグループの売り上げを押し下げる要因となり、本年度の売上高は前年度比8.4%減の550億円に減少する見込み。一方で、クラウド/SaaS事業や、システム運用代行/情報セキュリティ監視のサービスといったリカーリング型のビジネスの本年度の新規受注は30億円規模に達する勢いで推移しており、解約がなければ、そのまま来年度の売り上げに上乗せされることが期待できる。
東上社長は「来年度中に増収に転じる可能性が高い」と予想。中計最終年度には売上高を600億円に増やす計画を立てており、リカーリング型のビジネスを一段と積み上げていくことで目標に迫っていく考え。
また、GeneXusなどを活用したローコード開発は、手組みで業務アプリを開発するのに比べて粗利率が5~10ポイント改善している。JBグループの主要事業セグメントであるSI事業の粗利改善が進んだことを受けて、今年1月には本年度の営業利益の見通しを2億円増やして30億円に上方修正している。
ほかにも既存システムやSaaSアプリなどの形態や世代が異なるアプリ同士を連携させるJBグループ独自のツール「Qanat Universe(カナートユニバース)」も存在感を増している。オンプレミスやSaaSを組み合わせたハイブリッド化が進んでおり、Qanat Universeの販売本数も昨年度上期の34本から、本年度上期は250本に拡大している。経費精算や勤怠管理のSaaSアプリと既存の業務システムをつなぎ込むなどの活用例が多く、中計最終年度にはQanat Universeを1万本販売する強気の計画を立てている。