サイオスは2024年12月期までにSaaS事業のARR(年間経常収益)10億円超を目指す。同社は主力の「Gluegent(グルージェント)」シリーズをはじめSaaS商材の拡充に力を入れており、同シリーズの21年12月期のARRは、一昨年の12月期に比べて6.5%増の5億7700万円に伸びた。本年度(22年12月期)はリモートワーク支援など汎用性の高いSaaS商材の強化や、精神科病院向け電子カルテ、地方銀行や信用金庫向け経営支援ツールなど業種特化型のSaaS商材を追加することで、成長に勢いをつける。
(安藤章司)
SaaS事業を拡大するに際してサイオスは、業種・業態を問わず利用できる汎用性の高いSaaS商材と、業種特化型SaaS商材の2本柱の戦略を立てる。
前者はクラウド型ワークフローやシングルサインオン、Google Workspace活用支援などの現在主力SaaS商材となっているGluegentシリーズ。これとは別にコロナ禍期間を経てリモートワークが浸透していることから、遠隔で働く従業員のモチベーションを可視化する「Willysm(ウィリズム)」、出社するときに座席やリモート会議対応の個室などを予約する「YourDesk(ユアデスク)」の機能強化を推進している。
リモートワーク主体で働くケースでは、「出社したときは、できるだけ多くの人と雑談などの軽い接点を持ちたい」という要望があり、YourDeskは「抽選で座席予約」する機能が特徴だ。これによって「偶然近くに座ったことで、新たな気づきやビジネスのきっかけが生まれることが期待できる」と喜多伸夫社長は話す。Willysmはリモートで働く従業員のメンタル状態を把握したいというニーズからユーザー数が増えている。
後者の業界特化型のSaaS商材では、精神科病院を傘下に持つ医療法人成仁の監修のもとで開発してきた精神科向け電子カルテサービス「INDIGO NOTE(インディゴノート)」の展開を、この春から本格的に始める。また、地銀や信金向け資産・負債両側から総合的に管理する経営支援「Vivaldi(ヴィヴァルディ)」シリーズのSaaS版も本年度をめどに立ち上げる予定だ。
サイオス喜多伸夫社長(左)と同社米国法人の新井正広COO
病院や金融は規制業種ということもあり、オンプレミス型でのシステム運用比率が高い傾向にあった。だが、今後はクラウド移行の流れを受けてSaaS活用が進む見込みであることから、「医療と金融を重点業種ターゲットに位置づける」(喜多社長)戦略を展開する。
サイオスの製品ビジネスの一翼を担い、国内外で販売しているデータ多重化ソフト「LifeKeeper(ライフキーパー)」は、北米市場でAWSをはじめとするメガクラウドベンダーの公式オンライン販売サイト経由での販売が好調に推移。同社米国法人の新井正広COOは「メガクラウドベンダーと販売面で協力関係を築きながら拡販に力を入れている」と話す。
業種を問わない水平展開型と、業種特化の垂直型のマトリックスでSaaS型の商材を拡充、拡販していくことで、24年12月度までにARRでSaaS事業10億円超を目標に掲げる。ARRは月末の課金金額が向こう12カ月継続することを見越して年額換算した数値で、継続的な課金を前提とするSaaS事業の規模を表している。