アグリテック事業などを展開するTSUBUは、農業に特化したブロックチェーンプラットフォーム(PF)サービスの提供を開始した。生産者自身で撮影、入力した写真などのデータにハッシュコードを付与し、改ざんできない状態でのデータ所有を可能にする。データを生産地の証明に活用することで産地偽装の抑止を図れるほか、栽培時の農薬や肥料の量を記録・保存して生産物の高付加価値化にも生かせる。
PF上に保存するのは、生産者がスマートフォンで撮影した写真や位置情報、日付などのデータ。入力後は固有のハッシュコードが付与された状態で保存され、改ざんできないようになる。入力方法には「LINE」のチャット機能を採用して簡易化したほか、データベースには「kintone」を利用してコストを抑え、導入のハードルを下げた。
佐藤晃一 代表取締役
生産者が、産地などに関する改ざん不能なデータを持つことについて、佐藤晃一代表取締役は「自分たちを守ることにつながる」と指摘する。データがあると流通・小売業者は容易に偽装ができない上、万が一偽装された場合でも、自分たちが無関係だと説明できるからだ。
流通・小売業者は必要に応じて、生産者が持つハッシュコードに輸送時の環境や販売数量といったデータを紐づけることも可能だ。例えば、輸送時の温度履歴が残れば、コールドチェーンが保たれたまま店頭に並んでいることを保証できる。販売数量を記録すれば、仮に完売した場合、フードロスが発生していないという証明にもなる。
高付加価値化の面では、農薬や化学肥料の使用量といった情報も管理することができるため、無農薬野菜やオーガニック栽培をアピールする手段としての利用も見込める。今後はIoT技術との連携で使用量をより正確に測定し、記録できるようにしていく。
栽培から流通、販売に至るさまざまな面で、農作物の信頼性を保証することは差別化やブランディングにつながるため、農業の6次化に取り組む生産者や飲食・流通チェーンなどへの販売を想定する。
PFの運用を通じて、DXやSDGsなどへの理解を深める生産者向け学習プログラムも用意。アグリテックや再生エネルギーを活用して、イチゴなどの栽培に取り組んでおり、まずは自社の社員教育にプログラムを取り入れる。将来的にはPFとプログラムをパッケージ化し、顧客に対しても提供していく方針だ。
(大向琴音)