自治体向け戸籍システム開発などを手がける富士フイルムシステムサービスは、罹災証明書の発行を支援するシステムを商品化する。8月から水害に対応したタブレット端末用アプリを無償で提供し、本年度(2023年3月期)中をめどに地震対応のアプリを開発。来年度以降に商用版となる総合システムの販売を始める予定だ。
自治体が発行する罹災証明書は地震や水害といった自然災害で被災を受けた家屋を証明するもので、公的機関などの被災者支援の際に必要になる。迅速な支援を受けるためには、罹災証明書をできる限り早く発行することが求められるものの、家屋の被災状況を自治体職員による現地調査を行うケースが多く、時間がかかることが課題だった。
竹中 稔 部長
そこで、タブレット端末用のアプリを開発し、現地で入力した情報をオンラインで発行システムに反映して業務効率化につなげる。これまでは紙に記録した情報を役所に戻ってからシステムに手入力する手間がかかっていたが、この仕組みを使えば「現地調査の効率化を図ることができる」と経営統括本部の竹中稔・デジタル戦略推進部部長は話す。
今後はドローンで撮影した画像を分析し、おおよその被害状況を把握。他の市町村から応援で駆けつけた職員を含めた現地調査班の班分けを自動で行い、人的リソースの最適配置までカバーした総合システムを開発する。ドローン活用では愛知県豊橋市との共同研究を今年4月からスタート。罹災証明支援ではすでに熊本県八代市、大分県日田市、佐賀県武雄市と実証実験を進めている。富士フイルムシステムサービスの試算では総合システム活用で罹災証明書の発行にかかる時間や工数を半減できると見ている。
本年度中に現地調査用アプリの開発を終え、来年度以降に総合システムを開発。来年度中には5自治体をめどに実際に使ってもらえるよう販売に力を入れる。
(安藤章司)