NECは6月30日、メインフレームの新製品「i-PX AKATSUKI/A100シリーズ」を発売した。NOAH-7と呼ぶ独自CPUを搭載する中・大型機で、銀行の勘定系システムにも対応できる性能と信頼性を備える。国産勢のメインフレーム撤退が伝えられる中で、NECは今後も同事業を継続する方針を示している。
新製品の「i-PX AKATSUKI/A100シリーズ」
ACOSシリーズは1974年に発売されたメインフレームで、金融、公共、製造などの業種で基幹業務システムを稼働させる基盤として使用されている。現在はインテルのXeonプロセッサーをベースに過去のアーキテクチャーとの互換性を担保した小型機の「ACOS-2」と、独自CPUを採用する中・大型機の「ACOS-4」の2系統が販売されており、今回の新製品は約5年ぶりとなるACOS-4のハイエンドモデルに位置づけられている。
新たに開発した独自CPUのNOAH-7は、従来機に搭載されていたNOAH-6の4コアからコア数を倍増し、8コアの構成としたことで、CPU単体の性能を約2倍に引き上げた。最大構成時のシステム全体のコア数は32コアから48コアとなり、システム性能としても2倍以上に向上しているという。また、放射線耐性や電源部品を強化することで障害発生率の一層の低減を図った。
さらに、CPU上に暗号化エンジンを内蔵しており、既存の業務アプリケーションに変更を加えることなくOSレベルで自動的にデータの暗号化/復号処理を実施できる。メインフレームは独自アーキテクチャーのためサイバー攻撃のリスクはオープン系システムに比べ低いが、万が一攻撃者に侵入されデータを盗まれた場合も、暗号化によりデータの解読を防ぐことが可能。このほか、運用管理ツール「WebSAM」の機能を拡充し、ACOS、オープン系サーバー、クラウドの運用状況を一つの画面で一元的に管理できるようにした。
メインフレームに関しては2017年に日立製作所が独自製品の開発終了を発表し、今年は富士通が30年度の販売終了、35年度の保守終了の方針を明らかにしている。独自CPUを搭載するメインフレームを提供するのは世界でもIBMとNECだけとなっているが、NECは今後も5年ごとに新世代のハードウェアを投入するロードマップを公開し、ACOSシリーズの継続を宣言している。
i-PX AKATSUKI/A100シリーズは、三井住友銀行が次期勘定系システムへの採用を決定している。同行は新製品の導入により、金融サービスのデジタル化によって増大するデータ処理量に対応するための性能を確保する。またNECは、新製品の販売目標を向こう5年間で200台としており、これはメインフレームの事業を健全に継続可能な規模とすることを想定した数字だという。
(日高 彰)