トレジャーデータは、主力のカスタマーデータプラットフォーム(CDP)について、SIerなどビジネスパートナー経由の販売比率を高めている。顧客データを起点とした経営を重視するユーザー企業が増え、CDPと既存の業務システムを一体的に運用するケースが増加。既存システムとのつなぎ込みや、データ活用を進めやすくするSIの需要が生まれ、SIerが同社のCDPを取り扱う機会が増えていることが理由だ。本年度(2023年3月期)、ビジネスパートナー経由の販売比率は過半数を超える勢い。
(安藤章司)
CDPは、デジタルマーケティングのデータ活用基盤として使われることが多く、同分野でトレジャーデータは国内トップクラスのシェアを持つ。製品の特性上、ユーザー企業のマーケティング部門が購入の意思決定権を持ち、販路は、直販かデジタルマーケティングに明るいベンダー経由での販売が多くを占めた。SIerが顧客経営層や情報システム部門に売り込みをかける一般的なITシステムとは様相が異なっている。
小澤正治 COO
しかし、顧客起点でビジネスを組み立てる観点から、デジタルマーケティングで得た顧客データを経営に生かす機運が高まり、トレジャーデータの小澤正治・最高執行責任者(COO)は「既存の業務システムとの連携を深める動きが加速している」と話す。
例えば、マーケティング部門のみで使っていたCDPを、営業部門の日々の営業活動に役立てられるほか、CDPで得た顧客動向のデータを分析することで、より精度の高い販売予測を導き出し、在庫の最適化に応用できる。製造業であれば、生産部門のロット情報と顧客サポートをCDP上で連携させ、万が一、不具合ロットがあった場合、顧客サポートの窓口で迅速な顧客対応ができる体制づくりを支える基盤として運用するといったユースケースが挙げられる。
小澤COOは「顧客データを軸に、全社のさまざまなシステムと連携させることで、よりよい顧客体験を実現しやすくなる」と、全社的な活用によって、顧客起点で満足度の高いビジネスが展開しやすくなると指摘する。
販売管理や生産部門、顧客サポートといった既存システムとの連携に当たっては、個別のSIが伴うことから、SIerとの連携が加速している。昨年度(22年3月期)は、既存のデジタルマーケティング系のベンダー経由に加え、基幹業務システムに精通したSIer経由の販路を合わせた国内間接販売の比率は3割程度まで拡大。本年度は、既存システムとの連携やCDPの全社的活用が進んでいることから「国内での間接販売比率が半数を超える勢い」(小澤COO)だ。
SIer側から見ても、顧客企業が持つデータを分析し、業務革新につなげたり、新しい事業の立ち上げに応用したりするといった提案に、CDPは有用なデータ基盤となり得る。就労人口の減少で人材獲得が企業経営の大きな課題になっている今では、社内のデータ活用基盤を整えることで「従業員エンゲージメントが高まり、従業員の働き方改革、満足度の向上に役立つ」(小澤COO)との見方もある。
トレジャーデータの全世界の顧客数は450社余りで、うち国内企業は約300社を占める。売上比率で見ると国内が5割余り、次に北米、アジア・欧州が続く。小澤COOは、CDPを企業経営に不可欠な基盤として普及させていく構えで「これまで主力としてきたデジタルマーケティング領域をより一段と発展させ、応用範囲を広げていく」と意気込む。