飲食業・美容業向けSaaS型マーケティングツール開発のCS-Cは、主力の「C-mo(シーモ)」の販売が好調に推移している。昨年度(2022年9月期)はコロナ禍の制約で飲食業を中心に依然厳しい事業環境にあったにも関わらず、9月のARR(年間経常収益)が前年同期比37.2%増の15億円、契約店舗数は同35.9%増の3984店舗に増えた。伸びた背景には、コロナ禍の2年半で主力SaaS商材の美容業ユーザーの比率が、数%から60%超へと大幅に拡大したことが挙げられる。ターゲット業種を増やしたことで業績が大きく落ち込むことを回避し、顧客数やARRの伸びにつなげた。
石黒博和 執行役員
コロナ禍が始まる直前の20年1~3月期の主力SaaS商材の業種別比率は96%超を飲食業が占め、美容業は4%弱に過ぎなかった。その直後から飲食業を中心に厳しい制約がかかり、新規顧客の獲得が難しくなったが、「前々から準備していた美容業向けの販売活動を本格化」(石黒博和・執行役員営業本部部長)させたことで、1年後の21年1~3月期には飲食61%、美容39%へと構成比が大きく変化。直近では美容業顧客が6割へと逆転させることに成功した。
美容業向けの販路は、美容室にシャンプーや染毛剤を卸す美容卸業を中心に開拓。飲食店向けの主な販路である食材卸業ルートを開拓したノウハウを応用することで顧客を増やした。コロナ禍の期間に美容室への制限が強くなかったことも追い風になった。また、美容室は飲食と同様に経営規模が小さいケースが多く、マーケティングにかける予算が限られていることから、「オンラインツールを駆使した集客や固定客化を促すC-moと相性がよかった」(同)こともプラスに働いた。
本年度(23年9月期)はコロナ禍の規制が本格的に緩和されることが期待できることから、C-mo契約店舗数は前年度比16.8%増の4652店舗、ARRは同26.8%増の19億円への拡大を視野に入れる。同時に国内外の旅行客の増加が見込める旅行業を新規業種ターゲットとし、販売チャネルの開拓に取り組む。現時点での比率は小さいものの、グループウェアやPOSレジ、複合機などを販売するIT系のベンダーとの関係強化も進めることで販路の多様化、新規顧客の獲得につなげていく。
(安藤章司)