IT技術がビジネスの中心的役割を果たすようになった昨今、DXは企業にとって率先して取り組むべき施策となっている。DXを実現する上で「ITシステムの内製化」や「DevOpsの実現」は重要なポイントといえる。とはいえ、これまで取り組みを社内で行っていなかった場合やベンダーに依存している場合、具体的な取り組みや市場感をイメージし辛いのではないだろうか。そこで内製化やDevOpsについて、「ローコード」「DevOps」「クラウドネイティブ」という観点で解説していく。まず、ローコードがDXの実現にどのように寄与するのかを説明したい。
DXは「Digital Transformation」の略称で、直訳すると「デジタル変革」となる。そのため、「業務をデジタル化すること」をDXの本質であると勘違いしがちだが、実際にはそうではない。DXの本質は「競合優位性確保」であり、その手段として使用されるのがデジタル、つまり「IT技術」なのである。そして、ローコードはまさにこのIT技術に当てはまる。
では、なぜローコードがDXに有効であるのか。近年、IT技術は急速に一般化し、これまではITとは遠いと考えられていたような業界でも積極的に用いられるようになっている。例として、農業ではビニールハウス内の状態をセンサーで記録・監視し、そのデータを基にAIによる適切な温度・湿度管理といった活用が行われている。
このように幅広く活用されることによりIT技術に対する要件は複雑化し、対応スピードも求められる。競合他社と差をつけるためには、「年1回」のような更新頻度では後れを取ってしまうからだ。
ではこのような問題に対処しDXを実現・加速、そしてビジネス価値を最大化するにはどうすればいいのか。対策はさまざま考えられるが、「内製化」や「アジャイル開発」が代表的な対策であると考えられる。
内製化を行うことで、これまではベンダーに任せていた開発を自社内で完結することが可能になり、結果として開発時間の短縮や、ユーザーと開発者の距離が縮まることによる要件反映精度の向上といったことも実現可能だ。また、IT知識の蓄積という意味でも内製化は組織に大きな影響をもたらす。
小さい範囲で開発を繰り返し、実際に使用しながら開発・改修を繰り返すアジャイル開発についても、内製化と同様に開発スピードの向上や、品質の向上が見込まれる。アジャイル開発はユーザーの声を反映しながら作り上げるため、開発途中の要件変更による手戻りに素早く対応可能だ。
そしてこれらの実現に対して有効なIT技術がローコードなのである。
ローコードはその名の通り、アプリケーション開発におけるコーディング部分をなるべく簡素化し、プログラミング経験が少ない人であってもアプリケーション開発を行えるツールである。特に画面UI作成部分において、プリセット部品をドラック&ドロップで配置するだけで、ほとんど完成させることが可能なため、多大な効果を発揮する。これにより、これまで紙やエクセルで記録・管理していた業務のアプリケーション化や、社外使用のモバイルアプリケーションなどの作成が自社内で可能となる。
また、プリセットでの開発が可能なため、「最低限の動きを兼ねそろえたもの」が作りやすいというのも特徴だ。これはアジャイル開発においては重要な点であり、これまでのプロコード開発よりも格段に実施しやすい。そのため、アジャイル開発の実現・成功に大きく寄与してくれる。
このように企業にさまざまなメリットをもたらすローコードを自社でどのように活用できるのか、可能性は無限大だ。次回は「製品選定時のポイント」を解説する。
■執筆者プロフィール

佐藤梨花(サトウ リファ)
SB C&S ICT事業本部ICT事業戦略・技術本部技術統括部
テクニカルマーケティングセンタービジネス開発課
神奈川県出身。大学ではリベラルアーツ学群に所属し、情報科学を専攻。卒業後は新卒で入社した会社にて8年半、主に基幹系Webアプリケーション開発(言語はjava)に従事。メインは設計~コーディングだが、運用・保守も担当。2021年からはSB C&S(現)にて、開発での経験を活かしDXやDevOps、クラウドネイティブなど、アプリケーション開発に関わるツールのプリセールスを担当。