ラクスはクラウド製品のマーケティング強化に乗り出した。2023年2月には既存のクラウド事業本部を製品群別に分割し、「楽楽クラウド事業本部」と「ラクスクラウド事業本部」として再編。4月からはこれまで個別製品ごとに置いていたマーケティング部隊を各事業本部内で一本化する。経費精算SaaSの「楽楽精算」をはじめとする楽楽シリーズを中心としたソリューションの普及拡大に向け、東京郊外部や他の大都市圏、地方への訴求を強化する狙いで、特に地方については販売パートナーとの協力を積極的に推進したい考えだ。
(藤岡 堯)
ラクスでは従来、八つの製品がすべて「クラウド事業本部」に属していたが、2月から主にバックオフィス向け製品群を楽楽クラウド事業本部に、フロントオフィス向け製品群をラクスクラウド事業本部に移管した。それぞれの事業本部内に「楽楽精算事業統括部」などの担当部署を設け、事業を推進する。マーケティング部隊については、事業本部の直下に置くかたちとなり、各事業本部で管掌するすべてのソリューションを取り扱う。
吉岡耕児 執行役員
製品ごとに独立したマーケティングの実施は、担当の製品への理解を深掘りできたり、顧客層に合った提案、露出ができたりなどのメリットがあるものの、企業規模が大きくなる中で、横連携の不足や業務の非効率化などの課題が浮き彫りになってきたという。
執行役員の吉岡耕児・楽楽クラウド事業本部本部長兼楽楽精算事業統括部事業統括部長は「売り上げが伸び、従業員数が一つのサービスで小さな会社が成り立つ規模感にまでなったことを考えると、バラバラに動くことで無駄が発生している面もある」と指摘。加えて、知見やリソースを有効に活用する観点からも、マーケティング部隊の一本化には効果があると見込む。
営業部隊に関しては、顧客の業務領域に精通する必要があることなどを踏まえ、既存のソリューション別の体制を維持するが、顧客の悩みに応じて、担当外のソリューションも提案し、クロスセルにつなげられるよう意識づけを図っていく。
現在は東京都心部の企業を主要顧客としており、東京の郊外部や他の大都市圏、地方への訴求はまだ弱い面がある。マーケティング部隊のあり方を見直すことで、企業自体やソリューションへの認知を向上させ、顧客接点を拡充する狙いだ。
販売に関しては直接販売が主流だが、「地方のお客様に対しては、私たちが直接コミュニケーションするのは難しい」(吉岡執行役員)ことから、パートナーの力を得て、顧客の開拓を目指す。吉岡執行役員は「神奈川や千葉、埼玉といった東京近郊でも(SaaSは)まだ浸透していない。私たちがリーチしても動きのないお客様に対して、一緒に手を組みたい」と期待を寄せる。
新組織での本格稼働は4月を予定する。吉岡執行役員は「バックオフィスでのクラウドにおける第一想起を獲得し『まずは楽楽に相談したらいいね』という状況をつくりたい。そして、1社に複数の商材を利用してもらうことを確実に進める」と意気込む。さらに自社開発、M&Aを問わず、バックオフィス領域でのポートフォリオ拡大にも意欲を示している。