週末は、東北に魅せられて宮城県・七ツ森の自宅へ帰り、平日は仕事に魅せられて東京・恵比寿に戻る。渡り鳥のような生活だが、「常に移動しながら暮らすと、変化に適応する能力が衰えなくていい」と話す。3年前、七ツ森に、庭と、梅林、竹林が付いた自宅を購入、妻とふたりで暮らすようになった。編集稼業は忙しく、毎日のように朝帰り。東京生まれの東京育ちで、自分の居場所に疑問が沸いてきたとき、「国内亡命先」として選んだ地が東北だった。
自宅から車で40分。地下鉄の終点から仙台駅へと乗り継ぎ、新幹線で2時間。平日は恵比寿の仕事場と、近くに借りた部屋で過ごす。「ITバブル真っ盛りの起業当時に立てた『初年度年商10億円、その勢いでIPO(株式公開)まっしぐら』という強気の事業計画は、その後のITバブルの消滅で、実現できなかった。今年9月、ようやく独自のウェブコンテンツの管理ソフト『アラヤ』の製品化に漕ぎ着けた。これからが本番だ」
「仕事や人生で、自分の居場所=ニッチを見つけることは、とても大切なこと。競合他社がひしめくなかで、アラヤの投入を契機に、当社が成長すべきニッチを切り開けば成功する」と手応えを感じる。一方、東北は人生におけるニッチだ。変化する渦のなかで、その都度、自分や会社のよりどころを見つけ、着実に前に進む考え方だ。
プロフィール
(むらき いずみ)1953年、東京都生まれ。86年、「エスクァイア日本版」副編集長。88年、「週刊SPA!」編集デスク。90年、独立。91年、編集プロダクションのバビリ設立。95年、富士通のオンライン雑誌「テレパーク」編集長。01年1月、富士通の「スピンアウト・プログラム(独立支援制度)」を活用し、「彼方」設立。