18年前、オーストラリアの大学生時代に文化遺産保護研究のワーキングホリデーで初来日。「日本の古い文化も好きだが、現代文化や習慣に惚れた」。横文字の“英語なまり”もなく、ほぼ完璧な日本語を操る。NTTドコモのiモードにあるコンテンツの辞書/便利ツール分野で、エヌフォーの「総合英語辞書」は、現在ユーザー数で第3位。「当社のモバイル端末コンテンツは、ツールを使っていることを意識させず簡単で便利だ」。仮に間違ったスペルを打っても、近い英語を検索できるなど、人気急上昇のコンテンツだ。
エヌフォーは1992年の設立当初から、DTPの外字フォント作成ツールをパッケージやプリンタ会社に提供。業績が急上昇したのは、ある出来事からだった。「飲み屋街で隣のおっさんが、『日本製ソフトはフォントが使いにくい』と、僕に絡んできた。これだと思った」元々、日本語に造詣が深く、「活字が好き」だったため、独自の感覚でヒット商品を開発できたのだ。
今、モバイルコンテンツとフォントは会社の2枚看板。「日本は発想の宝庫。がんばるだけ対価が得られる」と、週の大半は東京・新宿のゴールデン街へ赴き、「ビジネスマンの愚痴から次のアイデアを練っている」。自身の両親、兄弟は、すでに日本に居を移した。日本国籍取得も近そうだ。「日本のメーカーの手伝いは今後も続けるが、次はアジア圏を制覇したい」と、漢字を使う中国や韓国での実績づくりを開始している。
プロフィール
リチャード・ノースコット
(リチャード・ノースコット)1966年、オーストラリアのメルボルン市生まれ。86年、オーストラリアの大学から上智大学の比較文化学部に転籍も1年で中退。87年、サンミュージックに入社。89年、CBSソニーコミュニケーションに入社。マッキントッシュによるデザインと出力システムを担当。92年、エヌフォー・メディア・研究所を設立。「PS外字キット」などのDTPソフトを開発。82年、新会社としてエヌフォーを設立し、社長に就任。