ビジネスに対する考えには、米国での経験が少なからず影響しているようだ。オーディオ製品の全盛期だった1970年代、当時の勤務先ソニーは、オーディオ製品の販路を代理店から直販に切り替えようとしていた。「売り場でのプロモーションは、販売担当の商品知識なども含めて、米国より日本の方が進んでいた」こともあり、日本製品は米国市場を席巻していた。
しかし、日本にないものが1つだけあった。「カタログショップ」というビジネススタイルだ。
米国のオーディオ機器メーカーは淘汰されたが、カタログショップは進化していき、パソコンも含め、ダイレクトセールスが流通革命をリードしている。「今は日本の流通の方が遅れている。将来を見据えて、ベストの方策を考えねばならない」と思う。
今秋からロジテックに加わった。「パソコンは本体も重要だが、周辺機器で活用分野の広がりをサポートすることがより重要。他社とは違った切り口でサムシング・ニューを提供したい」という。
精密工業の集積がある長野県・伊那に工場がある。他社とのコラボレーションで、付加価値を高めるのに有利な立地条件だ。しかし、そのためには、感覚ではなく、データを駆使した商品開発に転換する必要がある。
ユーザーのニーズを的確につかみ、それを徹底検証することで、「琴線に触れる商品」を生み出したい。来春には第一弾商品で、「思い切り花火を打ち上げたい」。
プロフィール
渡邊 敏夫
(わたなべ としお)1948年7月、北海道出身。69年3月、日本工学院電子工学研究科卒業。日本電気を経て、73年ソニー入社。AVエンターテイメント事業部長などを歴任。96年、ソニーマーケティングIT統括部長、2001年執行役員、02年執行役員常務。03年、ソニー退社、第一興商ゲートウェイ事業本部長。05年9月、ロジテック顧問。