野木秀子氏の活動フィールドは実に広い。CIJの営業を統括するかたわら、神奈川県情報サービス産業協会副会長を務め、得意分野のソフトウェア品質管理では、国内外で論文発表や講演活動を行う。働く女性の地位向上のための講演・執筆活動にも力を注ぐ。26歳で結婚し30歳で出産。激務の連続だが、約30年間、仕事と家庭を両立させてきた。
「就職した当時は、男性と差別されずに働ける業種、環境なんてほとんどなかった。男性と同等の立場で仕事をできる喜びがCIJにはあったから、しんどいなんて思ったこと、一度もないんです」
開発畑出身で、専門はソフトの品質管理だが、営業の実績も高い。営業に移った当時、顧客は富士通や日立製作所など特定企業数社だけだったが、NTTに食い込み3年で10億円の売り上げをあげた。今は、NTTからの売り上げは全社の40%を占めるまでに成長している。
「女性というだけで評価が下がり、悔しい思いをしたことは何度もあります」
その悔しさと辛さが自分を奮起させた要因でもあるという。話す口調は穏やかで柔らかな雰囲気だが、反面、根っからの負けず嫌いでもある。CIJの開発も営業も軌道に乗せ、ソフトの品質管理では、海外の学会からも論文発表を依頼されるまでに自身のスキルを認めさせた。
だが、まだまだやるべきことはたくさんあるという。今は日本のソフトウェア産業と働く女性の地位が低いことが気掛かり。働く喜びを今でも実感しながら、さらに活動範囲を広げていくつもりだ。
プロフィール
野木 秀子
(のぎ ひでこ)1948年、兵庫県生まれ。71年、京都教育大学理学科(物理学専攻)卒業。71年、日立製作所入社。システム開発研究所に所属し、データベースとOSのアクセス法効率化の研究に従事。75年、日本コンピュータ研究所(現CIJ)入社。生産支援ツールの設計・開発を担当。93年、取締役開発支援本部長。94年、取締役営業開発本部長。98年、米国子会社のCIJアメリカ、代表取締役社長。00年、常務取締役営業本部兼PI(パッケージインテグレーション)事業本部長。04年、常務取締役全社営業統括。神奈川県情報サービス産業協会副会長を務めるほか、世界ソフトウェア品質国際会議(WCSQ)アジア地区プログラム委員も務めるなど、業界団体での活動にも積極的。また、執筆活動にも精力的で、著書に「ステップアップしたい女性に贈る私流の小さなアドバイス」(悠飛社)などがある。