幼い頃から、“モノづくり”が好きだった。就職活動に励んでいた95年、インターネットが一般的に広まりつつあり、「マルチメディアが全盛期だった」ことから、ソフトウェアの技術者としてIT業界に足を踏み入れた。
02年から3年間は、「タンジブル・ユーザー・インターフェース(TUI)」の研究に没頭した。「タンジブル」とは、「触れて実感する、実態のある」などという意味。そのコンセプトを取り入れ、物理的なオブジェクトをデジタル情報にリンクするのがTUI技術だ。
NTTコムウェアでは、同技術を製品化するために米マサチューセッツ工科大学(MIT)と共同研究を行った。研究成果は、IPネットワーク網を構築する「タンジブルIPネットワークデザイナー」と、防災対策の効果予測が行える「タンジブル防災シミュレータ」。
両システムの開発とも、小林さんが大きく貢献した。
「誰でも手軽にコンピュータが使える世界を実現する」ことが近い将来の夢。パソコンが普及しているものの、メールと手書きの手紙を比較すれば、「メールのほうが冷たい感じがする」。
タンジブルを研究したことで、「コンピュータに『ぬくもり』を持たせる」ことが夢を達成する早道と改めて実感した。
今はまだ、「TUIが子供から高齢者まで、幅広い年齢層の誰もが使えるレベルまで達していない」のが現状。当面の目標は、「タンジブルをベースとした新しいユーザー・インターフェースの開発」だ。
プロフィール
小林 和恵
(こばやし かずえ)1973年7月16日、福井県出身。96年3月、東京大学工学部計数工学科卒業後、同年4月に日本電信電話(NTT)に入社。97年、NTTコミュニケーションウェア(現NTTコムウェア)設立に伴い、同社の研究開発部に所属する。02年、同社米国支店ボストン事務所に駐在。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボにタンジブル・メディア・グループ研究員として派遣。05年、NTTコムウェア本社の研究開発部に戻り、スペシャリストとなる。