スケルトンの特徴はうつ伏せの姿勢にある。最高速は約130㎞。あごの下数 ㎝を氷のトラックが飛び去る。
「恐怖を感じることもある。でもバトミントンのシャトルも重い方から飛んでいくでしょ。頭から滑っていくのは理にかなっているんです」。この人にかかると、何だか子供の遊びの延長にあるように聞こえる。長野県で生まれ育ち、「スキーやそりは冬の遊びでしたから」。
「とにかく目立ちたかった」とボブスレー選手を志して大学に入った。しかし、「1年目で挫折」してボブスレー部を退部。その後はアメリカンフットボールに熱中したが、1年目で挫折した悔しさが心に引っかかって、大学4年の秋、再びボブスレーの門を叩く。しかし1992年リレハンメルオリンピックの代表選考で敗退。そうした挫折の経験があって現在がある。
「目立ちたい」という気持ちが高じて、誰もやっていなかったスケルトンに転向した。それで越さんにはいつも「日本の第一人者」という形容詞がつきまとう。トリノオリンピックを前に、41歳という年齢ばかりに注目が集まる。「がむしゃらに突っ込んでいけばいいという競技ではない。繊細な神経を持ち合わせていないとコントロールできない」と年齢とともに積んだ経験が武器になると、気にしていない。
システックスとの契約は02年ソルトレークシティオリンピックの1年後。北村正博社長は越選手を評して、「明るくて、いい男。義理人情に厚く、責任感も強い」とベタぼめ。金メダルへの熱い思いを胸に17日からの競技に臨む。
プロフィール
(こし かずひろ)1964年、長野県王滝村生まれ。87年3月、仙台大学体育学部卒業。ボブスレー全日本チームなどを経てスケルトンに転向。02年ソルトレークシティオリンピックで8位入賞。03年3月からシステックス所属。今シーズンのワールドカップでは1月12日に行われた第5戦ドイツ・ケニックゼーの大会で9位。