電報や電話料金、電話帳など、民営化以前の旧日本電電公社では、定型業務の地味な部署を渡り歩いた。だが、PBX(電話交換機)がない当時、「固定電話の料金計算業務を任され、50万円でパソコンを買った」ことでITに目覚めた。
1989年に「ISDN」が登場し、この回線を普及させるために地方開拓のキャンペーン企画などを担当。地味ながら、NTTの将来像を肌で感じてきた実績をかわれ、「cocoaギガストレージ」サービスの責任者を任された。
同事業は、携帯電話専用のストレージサービスで、カメラ画像を保存・閲覧できるものだ。着任早々、「アイデアがどんどん湧いてくる」と、ソフトウェアベンダーに“飛び込み営業”を敢行。はがき作成ソフトや名刺管理ソフトとの連携を実現した。「まず浮かんだのが、名刺管理。携帯電話で名刺画像が見れたらビジネスマンには便利でしょ」。
これまでの業務経験で、システムの基本設計と要件定義まではこなす。それだけにソフトベンダー向けの提案書は、文句なしの完成度なのだろう。「コンシューマの人たちだけでなく、企業人コンシューマの利用者を増やす」と、サービス機能は急速に拡充しそうだ。
週末は、自分の子供と遊ぶことが多い。仕事を忘れるためだ。だが、そうした何気ない光景に「いろいろヒントがある」という。20代の頃、警察官試験に合格。一時はNTTを辞める覚悟もしたが、「100万ユーザー獲得を目指す。まだまだ夢が一杯」と、人生を謳歌している。
プロフィール
吉田 利一
(よしだ としかず)1960年1月、大阪市生まれ。78年、大阪府立長尾高校卒業。同年4月、大阪ガスに入社。同年11月、日本電信電話公社に入社。電報、固定電話の料金計算、固定電話の適正回線数計算、電話帳の印刷コスト計算、ISDNの営業担当などを歴任。02年、NTTコミュニケーションズに異動し、企画を担当。05年4月からは現職。