バネ製造の東海バネ工業は、経済産業省のIT経営百選の最優秀賞を受賞するなどIT活用型経営の先駆者として高い評価を得ている。「強みである1ロット平均で5個という多品種超微量のオーダーメイド生産はITがなければ実現できない」。
パッケージソフトは極力使わず、手組みのシステムを中心に機能拡張や新規開発で競争力を高める。IT戦略を担当する夏目取締役のこだわりのひとつだ。
「ユニークなビジネスモデルに合うパッケージなど存在しない。当社のシステムは業務を熟知しているITパートナーにしか開発できないものばかりだ」。多品種微量が職人の手づくりによるものであるならITにも職人技が求められる。
ITパートナーは、オフコン時代から付き合いのある大阪のSIer栗菱コンピューターズなど主に2社。長年、発注先は変えていない。
「バネ製造に必要な鋼材調達では、ITパートナーと二人三脚で臨んだ。鋼材の在庫圧縮に取り組んだかと思えば、鋼材需給が逼迫し、一転して調達力の増強へと戦略を変えた」
「必要な投資はケチらない。だが、時には勝ち残るために無理なお願いをすることもある」。職人を支えるのは、職人技でなければならない。だからこそ「ITパートナーとは長期的な関係が不可欠」だと考える。
「わたし自身もITをどう使うべきなのかを勉強したうえで、自分が描くIT戦略を素早く理解してくれるのが真のパートナーだと思う」と、知己を見いだすことが大切だと話す。
プロフィール
夏目 直一
(なつめ なおかず)1690年、大阪府生まれ。82年、京都産業大学経営学部卒業、金属加工メーカーなどに勤めたのち、88年、東海バネ工業入社。技術マネージャー、営業マネージャーを経て00年、取締役就任。情報システムなどを含む経営戦略全般を担当。経済産業省が推進するIT経営応援隊事業で、04年度のIT経営百選最優秀賞を受賞。