日立システムは今年4月、ERP製品強化のため、自社パッケージの就業管理システム「リシテア」とERPの開発部隊を統合した。その全体を指揮するのが、富永さんだ。ユーザーの要件、要望を聞き、設計の立場でプレゼンテーションしてプロジェクトを管理する。140人の部下のトップに立ち、約200の案件をこなす陣頭指揮をとっている。
システム構築では、お互いの思い違いなど些細なことがトラブルにつながりかねない。「顧客の体質とこちら側の体質を見極めて、リスクの有無を測る」ためにも、「人の話を聞き、相手が何を考えているのかを徹底して理解すること」を心がける。
当たり前のようだが、相手が考えていることを理解することが、一番大切なこと。腕に自信のある技術者ほど、「使う側の視点に立っていない、ひとりよがりのシステムをつくってしまう」傾向がある。
開発するシステムを使う人が「経営者なのか、現場なのか、そしてどのように使いたいのか。実際に使う側の立場で、いろいろな角度から考えなければモノづくりはできない」のだと断言する。そのためにも、社内、社外でも徹底的に人の話を聞き、思ったことはストレートに口に出す。
プロジェクトマネジメントは「常に先を見越して行動できなければダメ。リスクを踏まえて商談ができる人材を育てる」ことが使命だ。
「部下には怖い存在と思われている」のだと苦笑する。しかし根底には、「ビジネスには正解がないからこそ、やってみないとわからないことばかり」と実に謙虚。それゆえ、「それぞれがプライドを持って仕事に取り組める職場づくり」を目指す。
プロフィール
富永 由加里
(とみなが ゆかり)1958年、愛媛県新居浜市生まれ。81年、法政大学工学部経営工学科卒業。同年、日立コンピュータコンサルタント(現日立システムアンドサービス)入社。日立製作所への派遣でCADシステム拡販。87年、外販部門に転属。94年、自社パッケージ「リシテア」の母体となるPCスタンドアロン型商品開発を開始。02年、オープンソリューション事業部東京オープンシステム本部第4システム部担当部長。06年4月、オープンソリューション本部アプリケーションエンジニアリング部部長に就任。