ソフトウェアにはまったく興味が湧かなかった。「プログラマは人間味のない職業と思い込んでいた」からだ。高校時代に電子回路設計にはまり、大学で電子工学を専攻した。卒業後、画像処理装置メーカーに就職。「当然、ハードウェアの設計ができると思っていた」。しかし、入社して最初に与えられた仕事は画像処理「ソフト」の開発だった。渋々受けた仕事だったが、それをきっかけに「一転、ソフトの奥深さを知った」と振り返る。
その後、タブレットメーカーに入社し、文字認識ソフトの開発、商品化にかかわった。文字認識は人間とコンピュータのいわば「接点」だ。「ユーザーインターフェース(UI)次第で使い勝手が決まる」と分かり、UIに興味を持った。「コンピュータの世界に人間的な温かみを持たせたい」と10年以上、手書きソフトを開発し続けている。
99年にプラスソフトを設立、手書きソフト「ペンプラス」を開発した。最初は「いいものを作れば売れる」と考えていたが、それだけではだめだと気づいた。手書きソフトが「ニッチ」なために市場開拓できなかったのだ。販路開拓、顧客の創造が重要と分かり、その経験から経営哲学、戦略、マーケティングの必要性を痛感した。「モノを売ること」を徹底的に学んだ。今では大手メーカーのPCにもバンドルされ、出荷本数では100万本を超える。
常に、ピンチを喜びに変えてきた。「苦しい時『これを乗り越えれば市場を取れる』と発想を変えれば、ピンチは喜びになる」。命題は「手書きソフトを活用すれば生活はどう変わるか」というライフスタイルを提案し、顧客層を増やすこと。顧客に感動を与え、『手書き文化』の花を開かせるのが使命だ。
プロフィール
清水 真史
(しみず しんじ)埼玉県出身。1983年、工学院大学電子工学科を卒業し、画像処理装置メーカーに入社。画像ソフト開発に従事する。86年、タブレットメーカーに入社し、文字認識ソフトの研究・商品化に携わる。99年、竹花利明社長ら4人でプラスソフトを起業。現在、個人、法人向けに手書きソフトPenPlusシリーズを開発・販売している。