ジャストシステムのなかで当たり前の製品で、しかもビジネス拡大の重要な位置を占める「ATOK」。この“空気”のような存在を、「ユーザーに対して、いかに付加価値を与えられるかが勝負」と語る。
2006年からATOK事業に携わる。当初は「柱の事業で奇抜なことはできない」と、頭を悩ませた。変革したいという考えから出た言葉だ。確かに、一般に浸透し、あまり不便を感じなくなった製品というものは、ユーザーの多くが機能の良し悪しを言わなくなる。しかし、「ユーザーが抱いている、ほんの小さなニーズにも最大限に応えることが重要」。そこでこのほど、個人向けに変換エンジンを強化して日本語変換精度を向上させ、英語入力のサポート機能を搭載するなどのバージョンアップを図った「ATOK2009」を発売した。法人向けには、「ソリューションの徹底的な追求」。各システム案件でSIerと協業し「日本語変換の力を存分に発揮させる」ことに傾注している。これにより、統一した用語を使って誤りなく効率的に文書を作成できる製品・サービスを創り出した。
もともとジャストシステムに入社したのは、「ブランドが定着している製品が多かった。国産メーカーの存在感を一段とアピールしたいと考えたから」という。この想いを貫き通し、08年度(09年3月期)中間期の時点で、売上高が前年比36%増を果たすまでにATOK事業の成長を導いた。
「実は基本的にソフトを購入しない」と、照れくさそうに打ち明ける。だからこそ、理想的な機能を追求していけるのだ。「将来的には、プラットフォームに応じてATOK自体が変貌するような製品に仕上げたい」と、ソフトの魅力を引き出すことに余念がない。
プロフィール
佐藤 洋之
(さとう ひろゆき) 1969年11月19日、埼玉県出身。イベント会社や外資系コンピュータメーカーなどを経て、04年にジャストシステムに入社。販促関連の業務に従事した後、06年にATOKビジネスに携わる。現在、ビジネスオーナーとして事業拡大に向けた指揮を執っている