子どもの頃、胸に秘めた将来の夢は「サラリーマン」。幼稚園の先生には「夢がない」と心配された。大手メーカーのグループ会社に勤務し、営業所立ち上げに携わっていた父の背中は輝いて見えた。
大学卒業後、「ソフトウェアは基幹産業になる」と確信して、大手独立系SIerに入社した。最初は通信営業部に所属。飛び込み営業だった。回線を販売するため、何でも併せて売ったという。「MT(磁気テープ)を明日中に納めてほしい」と客から頼まれれば、土砂降りの中、大きな梱包のテープを抱えて運んだ。執念で最優秀新人賞を受賞した。
「もともとIT業界全体を知りたかった」。ネットワークは学んだ。今度はOSだと決めてノベルに入社。この頃に、〝立ち上げ屋〟の資質が芽生えてきた。製品拡販のため、ダイレクトマーケティングのメルマガやパートナーの月例セミナーを企画運営。次のターボリナックス ジャパンでは、パートナー制度「TurboLINKS」を立ち上げた。パートナーを主体として、その戦略ごとにサポート内容を組み変えることができるビルディングブロック方式で、売り上げを大きく伸ばした。
会社を起こした経験もある。17年間、数々の会社を渡り歩き、成長戦略を企画・実行し、成果を挙げてきた。その一方で、IT業界を活性化したいと「教育」にも熱心に取り組んだ。ターボリナックスでは「Turbo─CE」を、インフォテリア在籍中にはXML技術者制度「XMLマスター」を創設した。この資格は1万5000人以上の合格者を輩出している。
今年7月、自身が参加するOSSコンソーシアムの活動が本格化する。「海外中心で開発されるソースから技術を学び取り、それを応用して日本から世界に通用するソフトを送り出したい」。これが目下の大きな夢だ。
プロフィール
吉政 忠志
(よしまさ ただし) 1969年、東京都生まれ。92年、インテックに入社。95年、ノベル入社、Platform事業本部販売推進担当。99年、ターボリナックス ジャパンに入社。2001年インフォテリアを経て、受託開発会社ビズリンクを起業。06年、ワイズノットのソリューション営業本部長・執行役。08年よりファルコンストア・ジャパンで営業本部パートナー営業部部長。