藤井裕久が企画・設計に関わってきたNRIの最新鋭データセンター(DC)「東京第一データセンター」(約2500ラック相当)は、従来の同等規模のDC三つ分を収容できる高い集積度と処理能力をもつ。特許も出願した「ダブルデッキシステム」は、1フロアの高さを約8mに設計。上下に分割する間仕切りを入れ、上層にコンピュータ、下層に冷却装置などを配置したもので、業界初の実用化だ。
「地震対策として排水量20万トンくらいの商船にDCを載せたらどうか」「太陽熱発電で使うサハラ砂漠の土地の価格はいくらか」「いっそのこと、分散させたら?」と、設計当初は考え得る限りのアイデアをひねり出した。ゼネコン出身の藤井がコンピュータを学んだのはNRIグループに入社してからで、それまでは工事現場に陣取って、施工図や見積りの作成、最後は現場所長も務める根っからの建築畑の人間だった。
「どんなに最新鋭のコンピュータでも、5年もたてば陳腐化するサイクルの速さには驚いた」と、カルチャーショックを受けつつ、「本当に従来型のDCの設計思想のままでいいのか」と自問自答する日々が続く。実際、商船を活用したDCは、コンテナ型DCとして米国を中心に実用化され、再生可能エネルギーの研究も活発化している。
「だとしたら、建物の耐用年数30年のうち、コンピュータがざっくり6世代分入れ替わることを前提に、余裕をもった設計にしよう。電気設備は必要に応じてブロックごと入れ替える」と、コンピュータルームの下側に、高さ4mのマージンをもたせた「ダブルデッキシステム」を考案。「コンピュータ先進国の欧米の劣化コピーだけはやりたくなかった」と、技術者として何ができるかを愚直に追求し続けた成果だという。(文中敬称略)
プロフィール
藤井 裕久
藤井 裕久(ふじい ひろひさ)
1968年、千葉県生まれ。91年、東京理科大学工学部第二部建築学科卒業。同年、準大手ゼネコン入社。2001年、NRIデータサービス(のちに野村総合研究所と合併)に転職。2012年11月に全面開業した最新鋭大型データセンター(DC)「東京第一データセンター」の企画・設計に従事。