「日本にいるより、海外にいるほうが生き生きしている」──。坂口功治は、周りの人にそういわれることが多い。現在の活躍の場は、石油の国、サウジアラビアだ。現地への出張を繰り返し、サウジアラビア工業用地公団(MODON)から受注した環境管理システムのプロジェクトに携わっている。米国留学の経験や、そのときに培った英語力を生かして、日本側とサウジアラビア側の調整役を担っている。
このプロジェクトは、MODONの工業用地で工場やクルマから排出されるガスなどのデータを収集・管理し、工業団地内での環境改善に活用するもの。MODONを管轄するサウジアラビア商工省は、富士通の技術力を評価し、システムの開発を発注した。この11月の運用開始に向けて、急ピッチでシステムづくりを進めている。「日本からの直行便がなく、イスラム教のサウジアラビアは金曜日が礼拝日なので仕事ができないなど、いろいろと大変だが、全力でプロジェクトを完成させたい」と、坂口は意気込む。実は、富士通が今回の案件を受注したのは、エンジニアである坂口の“駆け込み営業”が発端となっている。
坂口は、入社2年目の2010年、あるイベントで駐日サウジアラビア大使と名刺交換し、富士通の製品をアピールした。帰社後にお礼のメールを送ったら、「提案に来てほしい」との返信がきた。当時、育成期間中だった坂口は最初からプロジェクトに携わったわけではないが、技術力を磨いて、上司に粘り強く「海外に行きたい」と訴え続け、念願通り、今年4月にメンバーに入れてもらうことになった。「自分が獲得した案件に戻った」と、人一倍、やる気を感じている。(文中敬称略)
プロフィール
坂口 功治
坂口 功治(さかぐち こうじ)
大学時代に、ニューヨーク州立大学バッファロー校とボストン大学大学院に留学する。2009年10月に富士通に入社し、システムエンジニアとして、テクニカルコンピューティング(TC)事業本部・軌道グループに配属。JAXA(宇宙航空研究開発機構)インフラグループを経て、12年4月に海外ソリューショングループに配属され、サウジアラビア工業用地公団(MODON)のプロジェクトを担当する。